一時期、フィンランドのノキアが携帯電話などで台頭してきたころ、小さい企業は、小回りが効き決断も早く、技術の変化にも対応しやすいことから、大きい企業よりも革新的な商品開発などができて、有利であるとの流れがあった。 フィンランドは、人口約500万人で日本の四国の400万人を少し大きくした程度の国である。もともとゴム長靴を作っていたノキアが、携帯電話のシェアを世界的に大きく広げていったのは、ご存知の通りである。 また、最近はサムスンやLGなど韓国勢の活躍も目立つ。韓国もそんなに大きな国ではないが、自国のIT市場はそれなりに発達している。欧米のIT市場に進出し、大きな実績を残した韓国は、ここ最近、周辺の中国や日本のIT市場に上陸してきている。 これらのことから、日本の中堅・中小企業が考えるべき新たな事業について触れてみたい。 まず事業分野の決定である。 たとえば、オリンピックに出たいと思ったら、誰もやっていない競技を選び、必死に努力する。よく言われてきた言葉である。 事業も同じで、世界に通用するものを作ろうと思ったら、誰もやっていない全く新しい分野を狙うべきであろう。 ITに関しては、オープンソース・ソフトウェアなど初期投資が少ないものを選ぶのがいいだろう。世界のグーグルでさえ、もともとはオープンソースを活用してシステムを構築している。 日本は、実績で評価する大企業社会なので、中堅・中小企業が始めた分野などは相手にされないことが多い。そこで、新たな事業を考えるとき、IT先進国である米国で成功する事業か、あるいは成功しかけている事業に狙いを定め、米国で交渉をしてみるといいかもしれない。 幸いなことに、我が国の市場はある程度の規模があるため、海外の企業から見れば、魅力的な交渉相手となるのである。 次に、独自性の発揮である。 狙いを定めた分野で、「世界一」を目標としよう。 「世界一」などと言うと、最近の若者にバカにされるかもしれないが、かつての日本の先人たちは、みんな中小企業から世界を制してきたのである。 独自性とは、10人中9人が右と言う時に、ただ1人だけ、左と言うことである。 現在のIT業界はクラウドが全盛であり、「集中」の時代である。しかし、これまでのITは、「集中」と「分散」を繰り返してきている。あえて、この時代に「脱クラウド」を掲げるのも大きな一手である。となると「分散」のビジネス可能性を追求することがビジネスチャンスかもしれない。 メモリが廉価になった今こそ、クラウドのように何処だか分からないところに個人データを預けるのではなく、それぞれの個人のPCに大量のデータを蓄積する方向にもっていけるような事業が、何かありそうではないだろうか?
【経営者とIT いま求められるITセンスとは】 ・第5回 消えつつあるCIOと情報戦略 【Vol.52】 ・第4回 日本型経営でのIT活性化 【Vol.51】 ・第3回 高品質・高付加価値なネットビジネスへの挑戦 【Vol.50】 ・第2回 中小企業の経営に求められるIT活用 【Vol.49】