高速モバイルアクセスの実現とクラウドの登場で、エンドユーザ様のIT利用形態の選択肢は増え、IT活用の視界も急速に広がりつつある。いっぽう多様化、複雑化する技術やサービスを、エンドユーザの個別ニーズに最適化して提供する役を担うパートナー様の存在は、これまで以上に大きい。普及期に入った仮想化の現況を踏まえ、マイクロソフトのクラウド戦略や、ベンダー各社が提供する「クラウド活用法」にフォーカスし、パートナー様へのメッセージを聞いた。 |
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ビジネスITにSaaS導入の動きが強まってきている。商材の拡充が進み、提供基盤となるプラットフォームが多数登場しているからだ。2011年のSaaS/クラウドの動向を、モバイル向けSaaSを提供するKDDI株式会社と大塚商会のSaaS販売プラットフォーム「BP PLATINUM Type-S」を開発するビープラッツ株式会社に聞いた。
通信キャリアの中で早期からSaaSに取り組んできたのがKDDI株式会社(以下、KDDI)だ。2007年にマイクロソフトと協業してリリースした「KDDIBusiness Outlook」は、auの携帯電話とマイクロソフトのExchange Server・SharePoint Serverを連携させ、会社のメールアドレスを携帯でも利用できるようにした統合型グループウェアだ。
「ソリューション商品企画部は、法人様向けにサービスを企画する部署です。
『弊社の通信回線を申し込めば、便利なSaaSなどのサービスも携帯とあわせて利用できますよ』とアピールできるよう、『KDDI Business Outlook』の開発を進めてきました」とソリューション商品企画部の阿部 大輔氏は話す。
「KDDI Business Outlook」は、大塚商会のSaaS販売プラットフォーム「BP PLATINUM Type-S」で提供されているが、KDDIが提供するモバイル端末向けSaaSのプラットフォーム「Business Port」で提供する業務アプリケーションとして開発された。
「中小企業のお客様の中には、まだまだPCを使っていらっしゃらない方もいます。しかし、携帯電話や携帯メールは
大半の方が利用しています。そういった方々へ、携帯電話から業務に使用できるメールが簡単に出せるというのがコンセプトです」と阿部氏。100人以下の小規模企業で特にメリットが高いと話す。
KDDIのSaaS販売プラットフォームBusiness Portは、SaaSを携帯電話利用者に提供し、SaaSベンダーには開発支援を行っている。現在、7社14サービスがラインナップされている。
ソリューション商品企画部の傍島 健友氏は、「販売パートナー様が拡販したいSaaSを並べ、エンドユーザ様に販売いただけるようパートナー様の声を大事にしていきたいと考えています。弊社は通信キャリアなので、アプリケーションのほうはアプリケーションベンダーさんにWinをとっていただけるよう協業していきたいですね」と話す。続けて、「さまざまな立場の方と協業し、SaaS市場を盛り上げていきたい」と話した。
「お会いするメーカーさんとの話の中で『SaaS/クラウドを売るための基盤が動き出しましたね』といわれることが多くなりました。一昨年まではエンドユーザ様も勉強だったところが、昨年は検討段階に入ったようです」とSaaS販売プラットフォーム「BP PLATINUM Type-S」の開発を手がけるビープラッツ株式会社代表取締役社長 藤田 健治氏は話す。
当初SaaSには、データのセキュリティなどを心配するネガティブな声が少なくなかったが、昨夏くらいからは、「サーバを自社に入れたくない。インストールして自社で管理するよりもSaaSを検討したい」との声が増えてきたという。
「マイクロソフトのクラウド戦略のメッセージが市場に効いています。国内企業にとってクラウドが身近に感じられるようになったのではないでしょうか。『自社サーバより専門の企業に頼んだほうが安心なのではないか』と考えられたり、自社サーバにトラブルがあっても、夜間や土日は対応が困難だと感じていたところに、SaaS本来のメリットが認識されてきていると感じます」と藤田氏。ほかにもSaaSには、アップデートの手間がなくメンテナンスフリーというメリットやインターネットから受けられるサービスのため、場所を選ばず利用でき、PCやスマートフォンなど多様なデバイスから利用できるというメリットがある。
また、SaaSベンダーのほうでもユーザの安心感を高める工夫を行っている。「BP PLATINUM Type-Sで提供している会計ソフト『PCA』は、Webブラウザからの利用以外に、クライアントPCにソフトをインストールできるため、万が一クラウドが止まったときにはPCで操作ができます。そのほか、利用するデータは社内サーバに保管し、ツールだけをクラウドから供給するなどの動きもあります」
「2011年は、業種・業務特化のSaaSが増加するでしょう。エンドユーザ様が得られる情報が多くなってきている中、パートナー様はSaaSをどうやってビジネスにするかが課題になるのではないでしょうか。エンドユーザ様のニーズを知っているところがパートナー様の強みなので、エンドユーザ様の予算を知り、IT環境をどう変えていくかがポイントになるでしょう。これには早めの取り組みでノウハウを貯める必要があります」
また、今年のSaaS市場について藤田氏は「市場シェアが圧倒的に高いマイクロソフトのOffice 365の動向によってSaaSの動きがわかるでしょう」と話した。
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■KDDI Business Outlookの3つの特長
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