高速モバイルアクセスの実現とクラウドの登場で、エンドユーザ様のIT利用形態の選択肢は増え、IT活用の視界も急速に広がりつつある。いっぽう多様化、複雑化する技術やサービスを、エンドユーザの個別ニーズに最適化して提供する役を担うパートナー様の存在は、これまで以上に大きい。普及期に入った仮想化の現況を踏まえ、マイクロソフトのクラウド戦略や、ベンダー各社が提供する「クラウド活用法」にフォーカスし、パートナー様へのメッセージを聞いた。 |
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ヴイエムウェア株式会社(以下、ヴイエムウェア)によると、国内での仮想化の状況は2009年の第四四半期から大きな伸びを示し始めている。今後、仮想化ビジネスがどのように展開していくかについて、ヴイエムウェア株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社に話を聞いた。
2010年、グローバル市場や国内で大きな伸びを見せているヴイエムウェアの仮想化ソリューション。グローバルについても国内についても、サーバの仮想化は普及期に突入したと見てよい状況だという。
「ヴイエムウェアでは、サーバの仮想化から全社的なクラウド化にいたるまでを3つのステップに分け『クラウドジャーニー』と呼んでいます。第一フェーズは、『使えるところから使う』、第二フェーズは『ミッションクリティカルなシステムを含む全社のITインフラへの仮想化の展開とセキュリティとマネージメントの強化によるプライベートクラウドの実現フェーズ』、第三フェーズは『ビジネスニーズの変化に応じてセキュリティを担保しつつ外部のパブリッククラウドのリソースをあたかも自社のデータセンターの一部として利用するハイブリッドクラウドの実現により、ビジネスの俊敏性を出すフェーズ』というステップです」とヴイエムウェア パートナービジネス本部長 中村 共喜氏は話す。SMBを含む大部分の企業ユーザは、コスト削減やITガバナンスの強化、リソースの最適化を求めて一昨年頃から第一フェーズを始めた状況だと話す。
しかし、現状のように一部の業務システムだけを仮想化することは、パートナー様にとってリスクの高い状況だという。
「ハイパーバイザーから下をすべて仮想化してプール化することにより、必要なリソースをオンデマンドで、必要に応じて提供できる時代になります。これまでパートナー様は、エンドユーザ様に導入されている他社のアプリケーションの要件がわからないため、サイジングができず、詳しいアーキテクティングができませんでした。他のSIerからの提案で『これ全部を仮想化しましょう』というのが通ってしまえば、エンドユーザ様のプラットフォームを丸ごと他社にもっていかれる可能性があります」と中村氏。すべてのSIerにチャンスとリスクがあると説明する。
中村氏は、仮想化によるコスト削減を叶え、ビジネスに俊敏性を出すには企業のIT環境を100%仮想化し、プライベートクラウド化し、更にセキュリティを担保した形でパブリッククラウドサービスを併用したハイブリッドクラウド化を実現することが必要だという。
「サーバの集約によるコスト削減だけではなく、必要になときに瞬時に新たなインフラリソースを仮想化された形で提供できたり、ユーザ自身がIT部門の手を煩わせることなく、サービスレベルに応じて自分で簡便に仮想化されたリソースを払い出すことができる様にすることによる運用コストの削減効果やサービス開始までの時間の削減による俊敏性の向上効果がビジネスへの大きなインパクトを与えます」。
ヴイエムウェアは、今後もパートナー様とともにエンドユーザ様の『クラウドジャーニー』を支援する予定だ。
「昨年から、パートナー様向けの仮想化トレーニングをWebで行っています。また、パートナー様向けのポータルサイトには、営業担当者様向けのVSP(VMware Sales Professional)という資格などが取得できるeラーニングを用意しており、無料で受講いただけます。「VSPは、多いところですと、1,000名近く取得しているパートナー様もいらっしゃいます」と中村氏。新人の標準教育としても活用いただいているという。
中堅・中小企業におけるサーバの仮想化の現状と今後の展開について、日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業開発 部長 東根作 成英氏に聞いた。
「出荷されるサーバのメモリ容量やネットワークアダプタの類は、前年と比較してもかなりリッチになっている印象があります。これを引っ張っているのが仮想化ではないでしょうか」と東根作氏は話す。サーバの仮想化を進める企業が増えれば、台数が減ることにより売上が減少することが考えられるが、仮想化で導入されるサーバはこれまでよりも単価はあがる。
「仮想化環境上でたくさんの仮想マシンを動かすときに、エンドユーザ様はパートナー様が持つノウハウを一番の頼りにしています。パートナー様が信頼性の高い仮想化環境をエンドユーザ様に提供することでビジネスが継続し、その先につなげていけるのでしょう」と東根作氏は話す。
仮想化ソフトについては、「弊社の提案はこれまでVMwareをベースとした仮想化が主流でしたし、今後も推進はしてまいりますが、今後はHyper-Vの採用も増えていくのではないでしょうか。マイクロソフトさんの販売施策により、弊社が今サーバにつけて販売するWindowsは、原則Windows Server 2008 R2です。もちろん、すべてのお客様がHyper-Vを使うということではありませんが、堅牢性・機能・集約率が高くなったHyper-V2.0が利用できる状態のサーバとして利用できます。パートナー様は、Hyper-Vを前提としたサーバのリプレース提案がしやすくなると思います」と話す。
仮想化提案への最初のステップがほしいパートナー様に対して、IBMはサーバの仮想化を手軽に実現する「太鼓判構成」を展開している。太鼓判構成とは、IBMのエンジニアが検証した、「ハードウェアと仮想化ソフトの構成例」のことだ。Webで無償配布している導入ガイドに従えば、同じハードウェア・環境を用意するだけで簡単に仮想化を実現できる。また、仮想化の先のクラウド環境の整備に対しても、太鼓判構成を提供している。
「必要な時にリソースを切り出してお使いいただける、比較的小さいサイズのプライベートクラウド環境として『ぷちクラ太鼓判構成』をご提供しています。これから始まる国際化の流れの中で、新しいIT投資が必要になることがあるでしょう。そこにきちんと迅速なサービスを社内ITとして提供できる仕組みが必要です。パートナー様にぷちクラ太鼓判構成をご利用いただき、パートナー様の付加価値としてご利用いただきたいと考えています」
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