東日本大震災では、東京電力管内の発電所が被災したことから、首都圏の電力供給量が大幅に不足するという問題が発生している。電力需要が供給を上回ると、発生時間や地域が予測不能な大規模停電を引起こし、予期せぬ被害が生じる恐れがある。
日本の電力需給の年間ピークとなる夏を目前に、企業から家庭まで国民一丸となった「節電」対策が不可欠だ。こうした「電力飢饉」への対策として、大塚商会がエンドユーザ様にどのようなソリューション提供しているのか、その提案方法やオフィスの節電方法、効果的な商材をご紹介する。 |
東日本大震災の影響で節電が余儀なくされている。震災直後は輪番で地域ごとに停電を実施する計画停電が実施されたことは記憶に新しい。
その後、計画停電は回避されたものの、電力不足は東日本にとどまらず、日本全体の問題になりつつある。この不足分を、そのまま節電でまかなわなければならない。
また、仮にこの夏を乗り切れたとしても、それでわが国の電力不足が解消するわけではない。被災地域にある原子力発電所の再稼働はメドが立たないだけでなく、現在稼働中の他地域の原子力発電所に注がれる目は厳しさを増している。整備のために運転を停止している原発の再稼働も含め、電力事情が短期に好転する見込みは薄い。もはや節電は企業の努力目標ではなく、社会的な要請であり、逼迫した緊急の問題であると同時に、長期的に取り組まなければならない課題なのである。
では、オフィスの節電、省電力化をどのように実施するのか。ここでは特にIT分野に絞って考えてみたい。
オフィスの中で最も台数が多い、すなわち消費電力が多いと考えられるのはクライアントPCだ。ほとんどの場合、社員毎に1台、場合によっては複数台のPCが使われており、PCの消費電力を下げることは、そのまま大幅な節電につながる。
クライアントPCの省電力化で、すぐにできることは、PCの省電力設定を有効にすることだ。現在使われているほぼすべてのPCが、省電力設定を備える。一定時間アイドルが続くと、プロセッサをスリープ状態にし、ハードディスクのスピンドルを停止させ、ディスプレイを消灯させる機能だ。しかし、せっかくの省電力機能も、ユーザによって設定がマチマチだったり、まったく省電力設定を行っていないユーザもいる。省電力設定を全社的に見直す、あるいは再チェックすることは、オフィスの省電力化で最も基本となる部分だ。
IT資産管理ソフトを導入している企業であれば、メーカーから省電力設定のポリシーやプラグインが配布されていないか、確認するのもよいだろう。特に、退社後の夜間や休日には、必ずPCをスリープやハイバネーション状態にする、あるいは完全にシャットダウンする設定を徹底したい。管理ソフトを導入していない場合も、Windowsサーバのアクティ
ブディレクトリを活用するなど、ポリシーベースの電源管理を行う方法はある。
現在使われているPCがデスクトップ型、特に導入されてから3年以上経過したものであれば、そろそろ更新を考えるべきだ。最新のデスクトップPCへ置き換えるだけで、大幅な節電が実現されるし、ノートPCへ置き換えればさらに消費電力を引き下げることができる。
インテルによると、2006年に主流だったデスクトップPC(Core 2 Duoプロセッサ、運用管理済み)が年間に消費する総消費電力量は129kWh。これをCore i5ベースの2011年モデルに置き換えると年間総消費電力量を約3分の1の45kWhに抑えることができる。同じCore i5ベースのノートPCであれば、28kWhまで消費電力を削減できるという。
最新のPCが省電力になっているのは、プロセッサそのものの省電力化に加え、高効率な電源ユニット(80PLUS認定等)の採用、低消費電力のSSD搭載、液晶ディスプレイの省電力化(LEDバックライト、リフレッシュレートの最適化)など、プラットフォーム全体での省電力化が進んでおり、トータルでの節電が可能になっている。
プラットフォーム全体での省電力化は、クライアイントPCにとどまらず、サーバでも積極的に実施されているが、そのアプローチが若干異なる。電力効率に優れたプロセッサの採用や電源ユニットの高効率化は、クライアントPCと変わらない。だが、クライアントPCに比べて、1台あたりのメモリ搭載量の大きなサーバでは、搭載するメモリデバイスの低電圧化(LV DDR)が積極的に行われている。また、安定動作のために大量の冷却ファンを内蔵するサーバでは、サーバ内のさまざまなところに温度センサを設け、温度に応じて最適なファン制御を行うことで、ファンそのものの電力消費も抑えようというわけだ。
ユーザの数によって、おおよその台数が決まってしまうクライアントPCと違って、サーバの場合は処理性能が収容可能なユーザ数を決める。つまり、新しい高性能なサーバを用いることで、古い大量のサーバを置き換えることが可能だ。インテルによると、最新のXeon5600番台のプロセッサを使ったサーバは、2005年の主流であったシングルコアのXeonプロセッサの15倍の性能を備えるという。つまり性能上は15台のサーバを1台で置き換えることが可能なわけだ。
このような物理サーバの統合を積極的に推進するのが仮想化技術である。1台の論理サーバ(サーバOS)上ですべてのアプリケーションを稼働させることは、可用性の点からも、セキュリティの観点からも望ましいことではない。たとえ物理サーバの台数を減らしても、複数の論理サーバを用いることで、サーバ間の独立性を維持し、可用性を確保することができる。vMotionに代表されるライブマイグレーション機能を利用すれば、アプリケーション負荷に応じて、稼働する物理サーバの数をダイナミックに最適化させることも可能だ。高性能サーバー(ハードウェア)と仮想化技術は、サーバ統合の両輪とでも言うべき存在なのである。
大塚商会では、開発用サーバを仮想化で統合したことで空調コストも大幅に削減できている。
マーケティング本部 プロダクトプロモーション部サーバ・ストレージグループ 中本明彦は、「7 5 台のサーバを5台に集約することで、サーバの総消費電力を約70%削減することに成功しました」と話す。仮想化ソフトにはVMware製品を用い、仮想化を進めました。そのノウハウを活用し、エンドユーザ様への仮想化提案も積極的に行っています」と説明する。以前は、開発用サーバが必要になったときに買い増していたためサーバルームの温度も上昇し、エアコンも増設する必要があった。今の空調温度は以前のプラス3℃で運用を行うことが可能となった。
また、中本は、仮想化の際の共有ストレージが不要な『StorMagic』を活用した提案が、中小企業のコスト削減と節電に大きな効果をもたらすと説く。
「物理サーバを仮想化し、以前と同じ環境を構築した場合、電気代が約半分になります。『StorMagic』を使えば、仮想化に不可欠である共有ストレージがいらなくなるため、さらに節電をすることができます。節電だけでなく、共有ストレージ分のコストが不要なため、中小企業の仮想化導入に最適なスモールスタートが可能です」と説明する。
フォームファクタの点では、ブレード型のサーバが注目される。ブレードサーバーは、電力効率を重視したプロセッサが使われていることに加え、サーバ間の接続にバックプレーンを用いる。従来であればサーバ間を接続していたケーブルを大幅に削減できることになり、冷却の点でも有利だ。10Gbitイーサネットなど広帯域のネットワーク技術とVLANを組み合わせることと合わせ、ネットワークの柔軟性を担保した上でケーブルを削減する技術の導入も考えたいところだ。
大塚商会では、節電対策で約20%もの消費電力量削減を実現している。マーケティング本部 ODSプロモーション部 ODSプロモーション課 北堀 利明は、「一番大きな節電効果があったのは、照明をこまめに消すことです」と話す。具体的には、以前は20時だった執務室の消灯を19時に変更し、消灯と同時に空調も切っている。「同じフロアで残業する人を見かけたような気がすると、本当は誰もいないのに照明がつけっぱなしになる場合があります。それを防ぐために強制消灯を行っています。空調も同時に強制切断しますが、一度切った空調を、わざわざつけにいく人は少ないため、節電効果は絶大です」と話す。
同課の尾上 博隆は、「この活動は夏場も継続します」と言い、さらなる節約を従業員全員で行う形となる。
続き、第二部「企業の事業継続」は 本誌を御覧ください。 |
■経済産業省が発表した夏期節電対策の具体例
■節電対策 ●IT資産管理ツール
■節電対策 ●仮想化ソフトウェア
■節電対策 ●省エネPC
■経済産業省が発表した夏期節電対策の具体例
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