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2012年7月時点の情報を掲載しています。
携帯電話やスマートフォン、デジタルカメラなど、小型デジタル機器を持ち歩いている人は多いだろう。しかし、常にバッテリー残量に気をつけていないと、いざ必要になったときに電池がなくて使えないという事態になりがちだ。こまめに充電すれば、そうした事態は避けられるが、充電をするたびに端子にコネクタを接続するのは面倒だ。その手間を減らすために考案された技術が無接点給電だ。無接点給電とは、コネクタなどの金属接点を使わずに、離れた場所に電力を供給する技術であり、その中でも古くから使われているのが電磁誘導方式である。電磁誘導方式の仕組みは、2つのコイルを重ねて配置し、片方のコイルに交流電流を流すと変動磁界が発生し、もう片方のコイルに電流が流れるというもの。ただし、コイルとコイルの間隔が大きくなると効率が落ちるため、通常は数ミリ程度の間隔で利用する。電磁誘導方式によるワイヤレス充電は、電動歯ブラシや電気カミソリなどで使われているが、それぞれの機器にあわせて設計されているため、他の機器との互換性はなかった。
2008年12月にワイヤレス充電の国際規格を策定するための業界団体「Wireless Power Consoritum」(WPC)が設立された。WPCが策定を進めているワイヤレス充電規格が「Qi」であり、2010年7月に最大5Wまでの電力を給電できる低電力向け規格の策定を完了した。電磁誘導方式には、機器と充電台のコイルの位置を正確に合わせないと効率が落ちるという欠点があるが、Qiは電磁誘導方式を採用しながらも、正確な位置あわせが不要な「フリーポジション」を実現していることが特徴だ。フリーポジションの実現方式として、「マグネット吸引方式」「可動コイル方式」「コイルアレイ方式」の3つが規定されている。マグネット吸引方式は、送電側のコイルの中心に磁石を配置し、磁力によって位置決めを行う方式で、可動コイル方式は機器の置かれた場所を検出し、それに合わせて送電側のコイルを移動させる方式だ。また、コイルアレイ方式は、充電台内部にコイルを敷き詰め、充電する機器に一番近いコイルを利用して給電を行う方式だ。Qi対応製品としては、パナソニックや日立マクセルなどから充電台が発売されているほか、NTTドコモやソフトバンクモバイルから、Qi対応スマートフォンが数機種発売されている。また、iPhone 4/4SをQiに対応させるワイヤレス充電用カバーも登場している。もちろん、Qi対応製品同士なら、メーカーが違ってもワイヤレス充電が可能だ。
Qiは、使ってみると非常に便利なのだが、まだ対応製品が少ないことが難点だ。パナソニックでは、2012年5月からタリーズコーヒーやファミリーマート、スリーエフなどの7法人約90カ所に、Qi対応充電台の導入を開始したほか、NTTドコモもローソンや空港ラウンジ、フロントなどにQi対応充電台を設置し、ワイヤレス充電を実際に体験できるような取り組みが行われている(ともに2013年3月末までの予定)。
現時点では、低電力向け規格しか策定されていないため、スマートフォンなどの消費電力が小さい機器でしか利用できないが、最大120Wまでの中電力向け規格の策定が進められている。中電力向け規格が策定されれば、より消費電力が大きなタブレットやノートPCなどでもワイヤレス充電が可能になり、市場拡大が見込める。Qi対抗の技術もいくつか提案されているが、いち早く実用化にこぎ着けたことがQiの強みだ。WPCには世界の有力企業が数多く加盟していることもあり、Qiがワイヤレス充電の標準規格として、広まっていくというシナリオは十分に考えられる。筆者は、2015年頃にはノートPCでもワイヤレス充電に対応した製品が登場し、さまざまな機器でワイヤレス充電が使われるようになると予測している。ここにIT業界の枠を超えた大きなビジネスチャンスがありそうだ。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
離席センサ(人感センサ)を搭載したNECのビジネス向けノートPC「VersaPro タイプVD」。使用者の在席/離席を関知してディスプレイの電源を制御可能。
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