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にっぽんの元気人
2012年9月時点の情報を掲載しています。

会社の現状や市場環境を素直に受け止められる経営者は成功する
経営コンサルタントとして、数多くの企業の「成功」や「失敗」を目の当たりにしてきた小宮一慶さん。その経験をもとに書かれた近著『こんな時代に会社を伸ばすたった一つの法則』の中で、小宮さんは経営者にとってもっとも大切な資質は「素直さ」だと語っている。厳しい競争の時代も、経営者に素直さがあれば乗り越えられるという。なぜ素直な気持ちを持った経営者は、会社を成功に導くことができるのか? そして、素直さを身につけるためには何をすればいいのだろうか?


人が成功するために必要なのは「素直さ」
BP:小宮さんは近著『こんな時代に会社を伸ばすたった一つの法則』の中で、経営者に求められるもっとも大切な資質として「素直さ」を挙げておられます。その理由について教えてください。

小宮一慶氏(以下、小宮氏):
お金を追いかけるよりも、いい仕事を追いかけたほうが結果として売り上げや利益を得られるというのが、わたしの基本的な考え方です。これは何もわたしだけの考え方ではなく、松下幸之助さんのように成功している経営者も、同じようなことを仰っています。そして松下さんは、「人が成功するために一つだけ資質が必要だとすれば、それは素直さである」とも仰っています。
 素直になれば、人の知恵を活かせるようになる。素直じゃない人は他人の意見を聞かないので、どんなに優秀な人でも自分以上には大きくなれません。素直な人は他人の話をきちんと聞けるので、他人の知恵を活かしながら自分を大きくできる。また、話をよく聞く人には他人が協力してくれます。言ったことを取り入れてくれるから、相手も言い甲斐があるわけです。だから「協力してあげたい」という気持ちになる。逆に言うと、素直じゃない人というのは、自分が大きくなれないし、他人は意見を言ってくれないし、協力もしてもらえません。時間が経つほど、その差は歴然となります。

BP:素直さが自分を伸ばし、会社を伸ばす力になるということですね。

小宮氏:
素直というのは謙虚さに繋がります。カー用品販売大手イエローハットの創業者である鍵山秀三郎さんは、「どんな人の本を読んでも、必ず勉強になるところはある」と仰っていました。偉くなる人には、他人から知恵を授かろうとする謙虚さがあります。
 ただ他人から話を聞いたり、本を読むだけでなく、そこから得た知恵を経営に活かしたり、人生に活かすことが重要ですね。
 だいたい、何事もうまくいかない人というのは頑固であることが多い。
 経営者というのは、はっきり言って実績だけでしか評価されません。実績が出ないときに、頑なに自分の考え方ややり方を貫いても、会社を潰すだけです。頑固な人は、実績が出ないのは世の中が悪いからだと思ってしまう。
 でも、結局は自分のやり方が間違っています。成功する人は、うまく行っているときは「運がよかった」と思い、失敗しているときには自分に何が足りないのかを反省できる人です。
 平時でも、素直な人のほうが仕事のパフォーマンスを出せます。現状に満足せず、より改善できるわけですからね。素直でない人は、そこそこのパフォーマンスが出たら、それで満足してしまう。そして「自分は正しい」と思ってしまいます。
 その点、素直な人は、どんなに実績がよくても「まだ改善の余地があるのではないか」と考えます。
 繰り返しますが、経営者は単に素直であるだけでなく、勉強熱心でなければなりません。経営のための原理原則というものがあって、それをきちんと勉強しないと会社は長く続きません。


現状維持は衰退なれる最高の自分を目指す
BP:経営の原理原則とは?

小宮氏:
例えば、お客さまを大切にするとか、社会環境の変化に敏感になるとか、キャッシュフロー経営をするということ。そうした原理原則は、勉強しないと分かりません。
 世の中には経営で成功した人、失敗した人がたくさんいるわけですから、その人たちの経験を活かすことも大事です。そこで大切なのは、単にケーススタディを考えるのではなく、成功や失敗をもたらした原因の本質を見抜くこと。経営に必要な考え方は、昔からいろいろな本に書かれていますし、多くの優秀な経営者たちが言葉を残しています。そういったことを日ごろからきちんと勉強しておけば、判断や行動を誤ることはなくなるはずです。
 原理原則が大事だということは、本来誰もが分かっているはずですが、多くの人は、どうしても眼前の小さな利益に心を奪われてしまいます。そして結果的に大きなものを失ってしまいます。ビジネスの世界では、目端の効く人が一時的に儲かることがありますが、原理原則を怠ると会社は潰れてしまう。ビジネスで大切なのは継続させることですからね。

BP:素直になるには、どんなことから始めてみればいいでしょうか?

小宮氏:
まずは「素直になろう」と思い続けることです。松下幸之助さんは毎朝、「きょう1日素直でありますように」とお祈りし、寝る前には、その日1日素直であったかどうかを反省していたそうです。それを聞いて思ったのは、素直な気持ちというものは継続的な訓練によって身に付くものなのだということです。おそらく松下さんも、自分が素直じゃなくてご苦労された経験がおありで、だからこそ、その反省から「素直になろう」と大変な努力をされたのではないかと思います。
 ちょっと物事がうまくいくと、人間誰しも傲慢になってしまうものですが、素直に反省する気持ちが大切ですね。
 自分が頑固であることを自覚していない経営者もおられますが、実績が出ているかどうか、他人が評価してくれているかどうかを客観的に見てみれば、いかに自分が頑固な経営をしていたのか気付ことができるはずです。
 日本は、ある程度努力するだけでも食べていける国なので、なかなか経営者やビジネスマンに向上心が生まれない。米国で大ベストセラーとなった経営書『ビジョナリー・カンパニー2』(ジェームズ・C・コリンズ著)は、「グッドはグレートの敵である」という言葉から始まります。そこそこの成功で満足しているようでは発展がありません。現状維持は衰退ですからね。
 わたしは、コンサルティングをさせていただいている経営者の方々に、つねづね「なれる最高の自分になってください」と申し上げています。
 一方で、経営者がカネの亡者になってしまうのはみっともない話です。そうなると部下が大変ですよ。カネ儲けの手段として使われてしまうわけですからね。世の中も、働いている人も幸せにする。その根本が「良い仕事をする」ということです。お客さま第一の「良い仕事」をすれば、みんなが幸せになれるのですから。
 お金儲けは、あくまで結果です。お金儲けのために仕事をすると、どうしても仕事が荒れてしまいます。お客さま第一ではなくなりますからね。そんな会社からはお客さまがどんどん離れてしまいます。お客さまや世の中が求めているのは「良い仕事」なので、それに集中すればいいのです。


競争の激しい業界ほどチャンスがある
BP:「お客さま志向」を定着させるためには、どうすればいいでしょうか?

小宮氏:
どの企業も「お客さま第一」という意識を社員に根付かせようと取り組ん
ではおられますが、意識を植え付けるだけでは、なかなか実践に結び付きません。大切なのは行動させることです。「お客さま志向」の意識が高まるのは悪いことではありませんが、小さな行動を徹底させるほうが、より効果的です。大切なお客さまは社内でも「さん」付けで呼ぶとか、ごあいさつの仕方、掛かってきた電話はベル3回以内で受話器を取るとか、お客さま志向の小さな行動を徹底していくなかで、少しずつお客さまの気持ちが分かってくるものです。
 わたしがなぜ、それに気付いたかというと、武道や茶道、華道など、「道」のつくものはすべて型から入ります。わたしたち凡人は、何千回、何万回と小さな行動を繰り返すなかで意識が芽生えてくる。だから、行動から入ったほうがいいのです。
 お客さまが求めておられるのは、われわれの意識ではなく、行動です。
 経営者が率先して行動すれば、社員も行動します。頭がいいのに成功できない経営者は、社員に対してティーチャー(教師)になろうとするからです。そうではなく、率先して行動するリーダーにならなければなりません。
 社員全員がお客さま志向の行動を徹底すれば、お客さまの気持ちが分かるようになります。そこから、お客さまの欲しい商品やサービスが見えてくるわけです。頭だけで考えている人は、お客さまの欲しいものを自分の頭だけで考えようとします。そんなものが売れるわけはありません。
 お客さまのために小さな行動を積み重ねている会社は、動作がきびきびとして、言動が気持ちいいからお客さまに好かれますし、何よりお客さまの目線になれるということが大事です。
 わたしがコンサルティングをさせていただいている会社の中には、行動を根付かせる具体的な方法として、お客さまのところには必ず約束の5分前に訪問するとか、お客さまのところで何か作業をしたら、必ず5分間はその周りを掃除するとか、毎月の小さな行動の目標を決めて、月末に上司と一緒に振り返り、そして全体会議で評価して、来月の目標を決めるという取り組みをしている会社があります。それによって、この会社は大成功を収めました。売り上げや利益は過去最高を更新し続けていますし、離職率は格段に下がっています。

BP:長引く不況とともに、IT関連企業も厳しい競争にさらされ続けています。そうした時代を生き抜くためのアドバイスをお願いします。

小宮氏:経済情勢や市場環境は時々刻々と変わっていきますが、大切なのは、他社との違いをいかに明確にするかということです。わたしの顧問先の会社で、いちばん伸びているのは印刷会社さんです。出版不況の嵐が吹き荒れる中で、この印刷会社さんの売上高は10年前の4億円から前期は100億円を超えるまでに急成長しています。
 市場の変化に合わせてやり方を変えたのが躍進の理由です。かつては製版から印刷まで請け負っていたのですが、製版データはお客さまからインターネット経由で提供してもらい、印刷コストを極限まで抑えて、全国どこにでも納品するという印刷のネット通販ビジネスを始めました。
 お客さまが欲しいのは、安くて品質のいい印刷。ただ、それだけです。そのためには自分が何をすればいいのかを考えればいいだけの話で、やり方を変えればいい。それを知るためにも、経営者は自分たちが置かれている環境を素直に受け入れなければならないわけですね。市場で何が起こっているか、お客さまが何を求めているのかを見極められるかどうか。チャンスはいくらでもあります。
 その意味では、競争の激しい業界のほうが有利です。ちょっとした差別化によってお客さまがすぐに集まりますからね。他社との違いがないから競争が激しいわけで、ちょっと他社と違いを出せば、たちまちシェアを拡大できるはずです。競争相手がいて有難いぐらいに思わなければなりません。ライバルと自社の強み、弱みをきちんと分析して、お客さまの求めるものを出せばいいのです。

小宮 一慶さんの近著

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小宮 一慶氏
K a z u y o s h i K o m i y a

◎ P r o f i l e
1957年、大阪府生まれ。経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。京都大学法学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行、在職中の84年7月から米ダートマス大学エイモスタック経営大学院でMBA取得。91年岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の93年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。94年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア・ホールディング)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。







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