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2013年7月時点の情報を掲載しています。
2.4GHz帯や5GHz帯の電波を使ってデータ伝送を行う無線LANは、オフィスや家庭はもちろん、空港やホテルなどの施設でも広く利用されており、現在の社会にとってなくてはならない技術だが、その進化の歴史は、高速化への挑戦の歴史であった。無線LANが広く一般に使われるようになったのは、1999年10月に策定されたIEEE 802.11bからだが、その理論伝送速度は最大11Mbpsであった。無線LANの実効速度は理論値の半分以下になることも多く、当時の有線LAN(100BASE-TX)が理論伝送速度100Mbpsを実現していたのに比べて、速度は大きく劣っていた。その後、2003年6月に最大54Mbpsを実現したIEEE 802.11gが登場、さらに2009年9月には、MIMOやチャンネルボンディング、フレームアグリゲーションなどの高速化技術の採用により、最大600Mbpsを実現したIEEE 802.11nが策定された。ただし、IEEE 802.11nの仕様にはいくつかのオプションがあり、600Mbpsというのはすべてのオプションを最高にした場合だ。そのため、IEEE 802.11n対応機器といっても、ノートPCの内蔵無線LANでは最大300Mbpsが主流で、一部の製品が最大450Mbpsでの伝送に対応する。IEEE 802.11nの普及により、無線LANと有線LANの速度差はかなり縮まったが(現在の有線LANは1Gbpsが主流)、我々が取り扱うデータサイズは年々大きくなる一方だ。デジタルカメラで撮影した画像や動画も解像度が向上し、サイズが大きくなっている。また、業務フローのクラウド化が進み、クラウドに保存したデータをブラウザ上で動作するWebアプリケーションで扱う場面も増えてきた。
こうした環境の変化を受け、IEEE 802.11nを超える高速無線LAN技術として現在策定中の規格が、IEEE802.11acである。IEEE 802.11acは、802.11nで採用された高速化技術を改良することで、すべてのオプションを最高にすると、理論伝送速度は最大6.9Gbpsにも達する。IEEE 802.11nと比べて、実に11.5倍もの速度であり、現在主流の有線LAN(1000BASE-T)の1Gbpsを大きく上回る。まさに、無線LANの常識を破る超高速無線通信技術である。ただし、6.9Gbpsの実現には、160MHz幅でMIMO8多重での通信を行う必要があるため、ノートPCなどへの実装は困難だと思われる。より現実的な80MHz幅のMIMO3多重でも、最大1.3GbpsとIEEE 802.11nの2〜4倍以上になる。
IEEE 802.11acは、まだ規格策定中の段階だが(正式規格策定は2013年12月予定)、すでにドラフト版に基づいた製品が各社から登場している。例えば、バッファローの無線ルーター「WZR-1750DHP」はIEEE 802.11acドラフトに準拠し、最大1.3Gbpsでの通信が可能だ。IEEE 802.11acは理論伝送速度と実効速度の差が小さいことも魅力であり、同製品は実測でも約915Mbpsという速度を記録している。ノートPCでは、NECの「LaVie L LL850」がいち早く対応し、最大867Mbpsでの通信が可能だ。また、バッファローからは最大867Mbpsでの通信に対応したUSB子機「WI-U2-866D」が登場しているが、USB 2.0対応であるため、実際のスループットはUSB 2.0の上限である480Mbpsを超えることはない。USB子機で、IEEE 802.11acの性能をフルに発揮するには、USB 3.0への対応が求められる。
今後は、IEEE 802.11nよりも数倍高速なIEEE 802.11acの登場により、無線LANアクセスポイントや無線LANルーターのリプレイス需要が見込まれるが、やはり本格的な普及は、 802.11acの正式規格が策定されてからになるだろう。インテルはすでにIEEE 802.11acドラフトに準拠した無線LANモジュールの出荷を開始しているので、2014年前半に登場するUltrabookやノートPCは、IEEE 802.11ac正式規格に準拠した無線LAN機能を搭載する可能性が高い。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
バッファローの無線LANルーター「WZR-
1750DHP」。80MHz幅のMIMO3多重対応で、
最大1.3Gbpsの伝送が可能だ
。
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