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2013年1月時点の情報を掲載しています。
2012年9月、インテルが発表したAtom Z2760は、開発コードネーム「Clover Trail」と呼ばれていた、Windows 8タブレット用に開発されたS o Cである。S o Cとは、System on a Chipの略で、1チップにシステムに必要な機能を集積したものだ。通常、PCを構成するには、CPU以外にチップセットと呼ばれるチップが必要になるが、Atom Z2760は、CPUコアを中心にGPUやメモリコントローラー、各種インターフェースコントローラーなどが集積されているため、あとはメモリチップとストレージなどを用意するだけで、PCの機能を実現できる。SoC化により、チップの数を減らすことができるため、消費電力の削減とコストダウンに貢献する。また、マザーボードをよりコンパクトにできるというメリットもある。
これまで、x86ベースのWindowsタブレットは、ARMベースのAndroidタブレットやiPadに比べて、バッテリー駆動時間が短いことが欠点であったが、Atom Z2760では、新たな省電力技術を搭載することで、消費電力を大幅に下げることに成功しており、ARMベースの製品に負けない駆動時間を実現できるようになった。その新たな省電力技術が、S0ixと呼ばれる新たなシステム動作状態のサポートである。Windowsが利用している省電力規格ACPIでは、システム動作状態をスリープ・ステイトとして規定しており、S0がフル稼働状態、S1がスリープ状態、S3がスタンバイ状態、S4が休止状態となる。Atom Z2760では、新たにS0i1とS0i3という2つのステイト(その総称がS0ixである)が追加されており、S0ステイトのまま、SoCの消費電力を劇的に下げることが可能なのだ。S0i1では、CPUが非常に消費電力の少ないC6ステイト(Deep Power Down)に移行するだけでなく、GPUやビデオエンジンなども低消費電力モードに移行し、消費電力を数mWに削減できる。S0i1からの復帰時間はμ秒オーダーであり、利用者は低消費電力モードに入っていることを意識せずに、そのままOSを使うことができる。S0i3ではさらにGPUやビデオエンジンへの電源供給も完全にカットするため、消費電力は数μWまで低下する。S0i3からの復帰はm秒オーダーであり、S0i1よりは時間がかかるが、いわゆるスリープ(メモリサスペンド)からの復帰に比べれば遙かに高速だ。
また、S0ixのサポートは、バッテリー駆動時間を延ばすだけではなく、使い勝手も大きく向上させてくれる。従来のx86ベースのシステムは、ARMベースのスマートフォンやタブレットと異なり、スリープや休止状態からの復帰に時間がかかることが弱点であったが、Atom Z2760搭載システムなら、使わないときにはS0i3に移行させておくことで、電源ボタンを押すだけですぐに使い始められるようになるのだ。さらに、Windows 8の32bit版では、Connected Stanbyと呼ばれる新機能がサポートされている。Connected Stanbyは、システムをスリープ状態にしても、インターネットとの接続が維持される機能であり、こちらもS0ixのサポートが前提となる。そのため、現状でConnected Stanbyを利用できるのは、Atom Z2760搭載システムのみとなる。メインストリーム向けCPUであるCore iシリーズは、現時点ではS0ixをサポートしておらず、2013年前半登場予定の次世代Core iシリーズ「Haswell」(開発コードネーム)まで待つ必要がある。S0ixは、今後のx86プラットフォームの展開の鍵を握る重要な機能であり、Atom Z2760は、その新機能をいち早くサポートした先進的な製品といえるのだ。Windows 8を搭載するピュアタブレットは、これから本格的にリリースが始まる。製品の優位性を理解したうえで提案し、案件獲得につなげたい。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
レノボから登場したWindows 8タブレット「ThinkPad Tablet 2」。Atom Z2760を搭載し、厚さ9.8mm、重量約570gの薄型軽量ボディを実現。
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