各種情報サービスやストレージサービスとして、個人用途では浸透しているクラウドサービス。ビジネスでの普及は、さまざまな理由により慎重だった。ところがWindows Server 2003のリプレースを機に、クラウドサービスは、一気に普及の兆しを見せている。そのサービスの中心となるのが、Microsoft AzureとOffice 365だ。今回の特集では、オープンライセンスとして販売可能な2つのサービスがなぜ注目されているのかを紹介したい。 |
Windows Server 2003移行ビジネスが本格化しつつある。そうした中、移行先の本命であるWindows Server2012 R2と共に、選択肢の一つとして浮上しているのがいわゆるクラウドサービスだ。「IT予算の平準化」「処理負荷の変動への迅速な対応」「システム管理の省力化」など、提案の切り口はさまざまだが、IT業界にとって魅力的な商材であることは間違いない。
その一方で、積極的なクラウド提案に二の足を踏むパートナー様も少なくない。その背後には、オンプレミスからの移行に伴う売上額減少への危惧があるに違いない。
だが今後、クラウドがIT業界において避けて通れない存在となることは間違いないだろう。その理由は大きく二つある。
一つは、IT投資の最適解を提案していく上で、クラウドの活用が不可欠になりつつある点だ。特に、オンプレミスとクラウドのハイブリットシステムは、今後のIT投資の主流となるだろう。
もう一つは、クラウドサービスの活用によって、ストック型のビジネスへの移行が可能になる点だ。たびたび指摘される通り、取引が一回一回独立するフロー型のビジネスは常に競争原理が働くため、売上の変動幅が大きく、需要が拡大する時期を除けば利益が得にくい。その対極にあるのが、月々安定的な売上と利益が確保できるストックビジネスだ。安定期の市場において、ストックビジネスが重視される理由もそこにある。
これまでIT業界においてストックビジネスは、システム保守など一部サービスに限られていたのが実情だった。こうした状況を大きく変える可能性を秘めているのがクラウドなのだ。
クラウド活用においてまず注目したいのは、日本マイクロソフトが提供するクラウドサービスであるMicrosoft AzureとOffice 365だ。どちらもOpen Licenseと呼ばれるライセンスプログラムを利用することで、一般商材と同様に仕入れて販売することができる。
Of f ice 365の場合は利用プランとユーザー数による月々の利用料金、Microsoft Azureの場合はプリペイドライセンスをベースにしたフロービジネスが可能になる。プリペイドライセンスについては、後ほどあらためて見ていくとして、まずはそれぞれの特長を見ていこう。
Microsoft Azureの主な提供サービスは三つに分けることができる。一つは「コンピューティングサービス」で、アプリケーションを実行するプラットフォーム(PaaS機能)、仮想マシン(IaaS機能)などがここには含まれる。
この中で特に注目したいのはPaaS機能だ。アプリケーションの作成には、.NETだけでなくPHP、Java、Python、Node.jsなどの言語、フレームワーク、コードエディターが利用できる。自社のシステム開発力に自信を持ち、その方向に特化していきたいと考えるパートナー様の場合、今後はアプリケーションをクラウド上で構築し、お客様に提供するというビジネスモデルも十分に考えられるだろう。
次がデータ管理サービス。SQLデータベースなどのソリューションや、クラウドストレージ機能を提供する。最後がネットワークサービスでVPNゲートウェイ機器を間に置くことで、Microsoft Azureを社内ネットワーク同様に利用することが可能になる。そのため、クラウドとオンプレミスのハイブリッドシステムの構築も容易に行える。
Office 365は、各種Officeソフトに加え、メール・予定表、ファイル共有システム、Web会議システムなど、ビジネスの基盤となる機能を網羅した企業向けSaaSである。お客様にとっては、WordやExcel、PowerPointなどのライセンスをOffice 365に移行することで、IT資産の最適化や管理工数の削減が実現可能だが、メリットはそれだけではない。Exchange Online、SharePoint Online、Lync Online などの機能を利用することで、社内のコミュニケーション基盤をクラウド上に容易に構築することが可能になるのだ。ストックビジネスへの移行にあたって、まっさきに注目したいサービスと言えるだろう。
すでに触れた通り、Office 365は利用プランとユーザー数に応じて、月々の利用料金が決まる。一方、MicrosoftAzureは「使った分だけ支払う」従量課金制で、その支払いは基本的にプリペイド方式で行う。具体的には、100ドル分(約10,400円)のサービスが利用できるライセンスを1ライセンス単位で購入する形になる。「プリペイドカードを必要な量だけ仕入れ、それをお客様に販売する」と考えるとイメージしやすいはずだ。
ライセンスの有効期間は1 2カ月で、未使用分の繰り越しはできない。Microsoft Azureをお客様への提案に組み込む際には、必要なライセンス数の見積りが一つのポイントになるだろう。
マイクロソフトでは、パートナー様を対象に見積り支援センターを開設しているほか、Web上で簡易見積りシミュレーターを用意し、的確な提案を支援している。
ここまで、Microsoft AzureとOffice365の基本機能を見てきた。次に、ストックビジネスへの移行に向けた、具体的な提案プランを考えていこう。
続き、「クラウドビジネス新時代 〜ストック型ビジネスは、次ステージへ〜」は 本誌を御覧ください。
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