2年ほど前から話題になってはいても、なかなかビジネスに結びつかないといわれる「IoT」。ところが既にコンパクトにモジュール化されたセンサーデバイスと管理ツールを組み合わせて具体的なソリューションが提供されている。それらの導入事例で感じたことは、業務効率の改善を目指して導入したサービスが、新たな価値を生み出しているということだった。今回の特集では、膨大なビッグデータを解析し、先進的なサービスを提供する「IoT」というよりは、小さなセンサーデバイスが持つ可能性について紹介したい。 |
IoT市場が本格的に動き始めた。これまでB to BベースのIoT普及は、特定の業種や一定以上の事業規模のエンドユーザー様に限られていた。だが、この1年ほどの間に状況は大きく変わり、業種や事業規模を問わず、多様な導入事例が次々に登場している。
これまで話題のみが先行している感があったB to BベースのIoT(Internet of Things)市場が動き始めた背景には、大きく三つの要素がある。一つは、価格的にもこなれた手頃なセンサーデバイスの登場だ。センシング技術のモジュール化が進んだことは、大掛かりな設備投資なしにIoT導入を可能にしている。次がIoT用の新たな通信規格であるLPWA(Low Power Wide Area)のサービス開始。通信速度は遅いが、電力消費量が極めて少なく、遠距離通信が可能なLPWAは、特に農業や建設業、製造業、老人や子どもの見守りといった福祉分野のIoTに欠かすことができない存在だ。そして最後が、政府によるIoT積極支援の意思表示である。
まず、政府の取り組みを簡単に押さえておこう。経済産業省が今年5月に発表した「新産業構造ビジョン」は日本流インダストリー4.0への道筋を示したものだが、IoTはビッグデータ、AIと共に構造的課題を乗り越える技術革新として位置づけられている。それに先立ち今年2月にまとめられた資料「IoTファーストの実現に向けて」では、主に公共セクターを中心とした初期市場の創出、減税や助成金による社会実装支援という二つの方向からの導入支援策がある程度具体的に語られている。
こうした状況を受け、IoT導入は企業の先進性を示す指標の一つになりつつある。IoT担当部署を設置し、導入に向けリサーチを進めるエンドユーザー様もかなりの数に及ぶが、多くの場合具体的な実績を示せずにいるのが実情だ。ではなぜ、専門部署を打ち立てたにも関わらず、実績につながらないのか。そこには先進ソリューションのセールスで陥りがちな落とし穴があることは間違いない。
停滞していたB to BのIoT市場に新たな可能性を生んだデバイスとしてぜひ注目したいのが、P Cサプライ製品メーカーであるサンワサプライが昨年から販売する「BLE Beacon」だ。現時点では、圧力検知、加速度検知、位置情報検知の各センサーとBluetoothを省電力化したBluetooth Low Energy(B L E)を組み合わせた5種類のデバイスが販売される同商材の最大の特長は、そのシンプルさにあることは間違いない。圧力検知、加速度検知センサーは圧力・加速度の有無を発信し、位置情報検知センサーはビーコン信号を発信し続ける。デバイス側の機能はわずかこれだけのことに限られるが、それにも関わらず、BLE Beaconには開発者さえ気づかなかった大きな可能性が広がっていた。サンワサプライ 東京サプライセンター 営業部主任の八十岡 一氏はこう語る。
「現状をお話しすると、企業内のIoT導入をご担当されている方からのお問い合わせが非常に多いですね。多くの場合、『こういうことがしたい』ではなく『何かいいアイデアはありませんか?』というところから商談が始まるのですが、いろいろとお話しをうかがうと、我々が思いもよらなかった用途が浮かび上がっているというのが正直なところです」
では、このシンプルなデバイスは何を可能にするのか。まずは実際の導入事例を含め、エンドユーザー様との対話を通して浮かび上がった用途を見ていきたい。
続き、「ビジネス化のポイントは、導入後のデータの見え方にある 小さな「IoT」が生み出す新しいビジネス」は 本誌を御覧ください
|