ソフトウェアの販売モデルが大きく変わっています。それは高度に進化したITインフラがもたらした、新しい働き方に対応する自然な流れといえます。この変化は今後のパートナー様のビジネスを左右する大きな転換期であることに間違いありません。そこで、大塚商会ビジネスパートナー事業部は、これからもパートナー様のソフトビジネスをサポートするために、クラウドへのシフトを全面的にバックアップいたします。その支援の中核となる「くらうどーる」を交え、その必要性と具体的な方策について特集します。 |
近年、ソフトベンダー各社は永久ライセンスを販売する物販モデルから、月額課金などの形態でサービスを提供するサブスクリプションモデルへの転換を急いでいる。クラウドとITビジネスの将来を考えるうえで、まずはその背後にあるIT環境の変化を考えていきたい。
今、日本のソフトライセンスの販売モデルが大きく変わっている。永久ライセンスをパッケージで提供する物販モデルから、サービスを月額課金で提供するサブスクリプションモデルへの転換である。日本マイクロソフトをはじめとするベンダー各社が自社製品の販売モデルの軸足をサブスクリプションに移そうとする中、ベンダーとエンドユーザー様を結ぶ役割を担うパートナー様にとってもその対応が急務となっている。
ベンダー各社がサブスクリプションモデルへの転換を急ぐ背後には、クラウドサービスの急速な普及がある。データをクラウド上のストレージで保管し、オフィスや自宅、あるいは移動中にPCやタブレットから必要なデータにアクセスするという運用が広く一般化している。そのため、従来の物販モデルに多かった1ライセンスと1台の端末を紐づけるライセンス管理方法はすでに実状にそぐわないものになっている。さらに言えば、ソフトウェア自体をクラウドで運用する純粋なクラウドサービスに至っては、ライセンスと端末を紐づけるという考え方自体が意味を持たない。
ITインフラの進化に伴うこの課題に対し、エンドユーザー様の利便性とライセンスの適正利用を両立するのが、人とライセンスを一対一で紐づけたり、同時起動できるライセンス数を設定したりするなど、ニーズに応じた柔軟なライセンス管理が可能なサブスクリプションモデルと言うことができる。
ベンダーにとってのサブスクリプションモデルのメリットはそれだけではない。パッケージ版の製造・流通コストが不要になることはもちろん、将来的には最新バージョンを一元的に提供する環境が実現する点も見落とせないポイントだ。
従来の物販モデルを継続する限り、最新バージョンに加え、数世代前のバージョンの継続的なサポートが必要になる。しかし、あらゆるエンドユーザー様に常に最新版を提供するサブスクリプションモデルであれば、こうした重複したサポートは不要である。付け加えるなら、バージョンアップにおける後方互換性の縛りから解放され、常にベストプラクティスが選択できるようになる点も大きなポイントだろう。
ITインフラの進化とそれに伴う市場の変化を受け、日本マイクロソフトがOffice 365の名でオフィスソフトを中核としたサブスクリプション製品を発表したのは2011年のこと。翌年にはアドビシステムズが同社の主力製品であるデザインソフト統合パッケージCreative Suiteのサブスクリプション版であるCreative Cloudを発表。2013年には他社に先駆け、サブスクリプションモデルへの全面的な移行を実現している(現在もPhotoshop Elements、Premiere Elementsなどの単品製品は永久ライセンス版の販売を継続)。同様に2016年にはオートデスクが永久ライセンス版の販売を全面終了するなど、サブスクリプション版への移行は確実に進行中だ。上記ベンダー以外も、セキュリティソフトやグループウェアを手掛ける多くのメーカーがサブスクリプション版をすでに発売している。
その一方で、エンドユーザー様に目を向けると、永久ライセンス版からサブスクリプション版への移行は必ずしも順調には進んでいないようにも見受けられる。その理由としては、さまざまな要因を考えられるが、一方では2017年に過去最高の収益を記録したアドビシステムズの屋台骨に成長したCreative Cloudのような成功例もすでに登場している。
Creative Cloudの成功は、サブスクリプションモデルを考えるうえで、さまざまなヒントを与えてくれる。成功の理由として指摘されるのは、やはり導入コストの大幅な低減だ。例えば、Photoshop、Illustratorの単体プランであれば月々1ライセンス1,000円程度で利用が可能。こうした敷居の低さが、画像編集や映像編集に興味を持つ一般ユーザーや印刷物や映像制作の内製化に取り組もうと考える企業ニーズの開拓にもつながったと見られている。
実際にCreative Cloudの導入事例には、これまでの同社の主要顧客だったデザインや画像編集、映像編集に関連する企業だけでなく、メーカーや小売、サービス業など一般企業の事例も数多く含まれている。その背後にあるのが、印刷物や映像制作の内製化という潮流だ。
制作コスト削減やニッチニーズへのきめ細かな対応という観点からクリエイティブ業務の内製化に関心を持つエンドユーザー様は確実に増えているが、高価なデザインソフトの購入は、二の足を踏むことが少なくなかった。だからこそ社内の人的リソースや高性能な複合機・プリンター、最新デザインソフトの組み合わせで何ができるか、比較的気軽に試せるようになったことは、そうしたエンドユーザー様にとって大きな意味を持つはずだ。
次に、サブスクリプションモデルがエンドユーザー様にもたらすメリットについて整理しておこう。それは大きく二つの方向から考えることができる。一つは、ソフトウェア資産の最適化が容易に図れるようになる点である。
購入した永久ライセンスの管理は、これまで多くのエンドユーザー様にとって大きな課題であり続けてきた。例えば、ある部署ではライセンスが余っているにも関わらず、別の部署ではライセンスを新たに購入するようなことも決して珍しいことではない。こうした問題の背後には、業務に見合ったソフトを調達するには、どうしても部署レベルの判断に委ねざるを得ないという理由がある。サブスクリプションモデルであれば、契約ライセンス数やその運用状況のコントロール画面で一元管理できるため、こうした問題の解決が可能になる。
もう一つの方向性が、ソフトウェアのコストが毎月の経費として処理できるようになる点だ。そのメリットは二つの意味を含んでいる。まずは経費化による会計業務の効率化で、次が導入コストなしにソフトが利用できるようになる点だ。
その恩恵を受けるのは、資金に乏しいベンチャー企業やスタートアップ企業だけではない。例えば大規模プロジェクトの立ち上げにあたりスタッフを増員するような場合も、サブスクリプション版の活用は効果的だ。繁閑差が大きければ大きいほど、そのメリットはより大きなものになる。例えば、公共建築のコンペに積極的に参加するある設計事務所の事例では、発売間もない段階でAdobe Creative Cloudへの移行を決断した理由としてライセンス契約の柔軟性を挙げている。また、ソフトウェア利用コストの経費化は、事業部やプロジェクト単位でシビアな原価管理を行いたいというエンドユーザー様のニーズに応えることにもつながる。
パートナー様にとってもメリットは多い。導入コストが不要になるという特長は、短期的に見れば売上減少をもたらす一方で、販売しやすさにもつながる。また、安定的な利益確保を可能にするストックビジネスの実現もメリットの一つ。さらに、商取引の多くをオンラインで行うため、業務工数が大幅に削減することも注目ポイントだろう。
ソフトベンダーとエンドユーザー様のそれぞれにメリットがあるサブスクリプションモデルへの移行は、クラウドサービスの普及とともに今後確実に進むと見られる。それに伴い、ITビジネスのあり方も確実に変わっていくはずだ。
続き、「総力特集 くらうどーるでクラウドシフト」は 本誌を御覧ください
|