オープンソースソリューションのHAクラスタソフトウェア『LifeKeeper』は、Linux市場で浸透しているが、テンアートニでは、ニーズが急増しているWindows版にも力を入れている。今年5月にリリースした最新バージョン『LifeKeeper
for Windows v5.2』は、コストパフォーマンスが大幅に向上し、最小限の追加投資でHAクラスタシステムを構築することが可能になる。
インターネット経由の商取引が一般化したことにより、今では中小企業の基幹系や情報系のシステムにおいても、24時間365日ノンストップで稼動することが求められるようになってきた。その実現手段として、サーバを冗長化させることにより、業務の可用性を向上させるHAクラスタに対するニーズが急増している。しかし、中小企業では、システムに追加投資できるコストが限られているため、比較的高価なイメージがあるHAクラスタシステムを簡単には構築できないという現実もある。
そこでおすすめしたいのが、テンアートニが販売しているHAクラスタソフトウェア『LifeKeeper for Windows』である。もともと『LifeKeeper』は、米国SteelEye
Technology社がWindows版を先に開発した経緯があり、日本でも、2004年からWindows版を販売開始した。GUIの日本語化や日本語のオペレーションマニュアルを同梱するなど、Linux版にはない工夫が施されている。さらに最新バージョンの『LifeKeeper
for Windows v5.2』では、パフォーマンスが大幅に向上し、より導入しやすくなった。
Windows環境では、HAクラスタを実現する手段として、『Microsoft Cluster Service(MSCS)』を利用するケースが多いが、『MSCS』は、Windows
Serverファミリの上位製品で比較的高価なEnterprise EditionやDatacenter Editionを購入しないと稼動しない。しかし、『LifeKeeper
for Windows v5.2』は、中小企業でも一般的に導入されているStandard Editionでも稼動する。また、Exchange
ServerやSQL Serverを『MSCS』でHA化するためには、そのアプリケーション自体も、ライセンスコストが高いEnterprise
Editionでなければならない。しかし、『LifeKeeper for Windows v5.2』は、アプリケーションもStandard
Editionで稼動する。
さらに、『MSCS』は、必ず共有ストレージが必要になり、2台以上の同一のサーバを新規に購入しなければHAクラスタを構築することができないが、『LifeKeeper
for Windows v5.2』は、共有ストレージがなくても32ノードまでのクラスタ構築が可能で、新規に同一のサーバを用意する必要もない(図1)。例えば、既存の古いサーバと最新のサーバを組み合わせてHAクラスタを構築することもできるので、既存の資産を活かしながら導入コストを最小限に抑えることができる。したがって、『LifeKeeper
for Windows v5.2』を活用すれば、ハードウェアやアプリケーションを含めたシステム全体を比較すると、『MSCS』のおよそ半額くらいでHAクラスタシステムを構築することが可能になる。
『LifeKeeper for Windows v5.2』では、ネットワークの有効帯域幅の90%まで活用可能になり、データレプリケーション(複製)のパフォーマンスが大幅に向上している。例えば、LAN環境が10Mbpsの帯域幅のスループットではv5.0の約1.5倍、100Mbpsの帯域幅ではv5.0の約2.5倍の高速化を実現している。また、WAN環境では、レイテンシ(データのリクエストがあってから実際に転送されるまでの遅延時間)にかかわらず、帯域幅の90%のパフォーマンスを実現する。例えば、レイテンシが85mm/秒の場合、v5.0に比べ、1.5Mbpsの帯域幅では約2.3倍、45Mbpsの帯域幅では20倍近くも高速化する。
また、データ・レプリケーションを完全同期で行うと、サーバ間でデータのやり取りが頻繁に行われるので、それがシステム処理のボトルネックになる可能性が高い。しかし、『LifeKeeper
for Windows v5.2』では、非同期のミラーリングもかけられるので、ネットワークの帯域をあまり気にせずデータ・レプリケーション構成を取ることができる(図2)。さらに、アプリケーションごとにネットワークで使用する帯域を分けて設定することができる。重要度や利用頻度の高いアプリケーションにより多くの帯域を確保させることで、効率的にミラーリングすることが可能になる。
このようなデータ・レプリケーション機能を活用することにより、WAN環境におけるディザスタリカバリも比較的スムーズに行えるようになる。『LifeKeeper
for Windows v5.2』では、DNS(Domain Name System)のアプリケーション・リカバリキットが用意されており、それを使うことにより、遠隔地のサーバ間でサーバネームを引き継ぐこともできる。例えば、東京で使用していたサーバがダウンした場合でも、クライアント側は何も意識せずに大阪のサーバにあるアプリケーションをそのまま使い続けることができる。
LifeKeeperの魅力のひとつは、HAクラスタ化がスクリプトレスで簡単に構築できるようになるアプリケーション・リカバリキット(ARK)がオプションで用意されていることである。『LifeKeeper
for Windows v5.2』では、市場のニーズが高い『IBM Director ARK』と『SAP ARK』が新たに追加されている。
『IBM Director ARK』は、IBMのIAサーバなどで使われている管理ソフトウェア『IBM Director』に対応したもので、『IBM
Director』が稼動する環境でHAクラスタシステムを簡単に構築できるようになる。これは、テンアートニのホームページから無償でダウンロードすることができる。一方、『SAP
ARK』は、ERPパッケージ『SAP R/3』に対応するもので、データベースにOracleを使うクラスタ構成をサポートしている。
また、『LifeKeeper for Windows v5.2』は、最新のサーバOS『Windows Server 2003 R2』や、SQL
Serverの最新版『SQL Server 2005』に対応し、最新のシステム環境でHAクラスタ化を実現することができる。さらに、『VMWare
ESX Server』による仮想サーバのクラスタ構成にも完全対応している。例えば、複数のサーバを冗長化するために、それぞれにアクティブとスタンバイのサーバを用意するのは大変である。しかし、仮想サーバをひとつ用意してそれを冗長化すれば、物理サーバをいくつも用意する必要がなくなるので経済的だ。そのうえ運用管理も楽になる。
テンアートニは、LifeKeeperの発売元であるSteelEye Technology社を今年5月に買収して子会社化した。これにより、今まで以上に手厚いサポートが行える体制が整い、日本市場のニーズを反映した製品開発が可能になった。より一層、販売パートナーは安心して『LifeKeeper』のシステム提案することができるだろう。
■HAクラスタリング構成とコストの比較
システム全体で比較すると、『Lifekeeper
for Windows v5.2』は一般的HAクラスタ構成のおよそ半額で構築が可能
■データ・レプリケーション機能の向上 アプリケーションごとに分けてネットワークの帯域を確保できる 『LifeKeeper for Windows
v5.2』では、非同期のミラーリングにも対応
■アプリケーション・リカバリキット(ARK)の利点 異なるサービスを組み合わせてHAシステムを構成する場合でも、制御スクリプトを修正しなくてもGUIで構成を可能にする。そのためサービスを停止することなく組み込めるのがメリットである。
『LifeKeeper for Windows v5.2』の対応ARK
『Microsoft SQL Server ARK』
『Microsoft Exchange Server ARK』
『Oracle ARK』
『IBM Director ARK』
『SAP ARK』 ※青字は、『LifeKeeper for Windows v5.2』から追加対応