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2006年11月時点の情報を掲載しています。
秋葉原の有名量販店でマネージャをしていたとき、接客方法は実に多彩且つ"絶対"はないということに気づきました。今回は御社にもいるかもしれない、店員のタイプについて触れたいと思います。
まずは商品に相手の注意を向けさせることを重視する超まじめ店員からご案内します。正しい商品知識をお客様に提供することに執心し、懇切丁寧に商品に関する情報を知らせようとします。当然ながら商品説明は要点を押さえたもので、「あなたの説明は非常に分かりやすいですね」と感謝されることもしばしばです。ただし、懇切丁寧がアダになってしまうお客様もいます。「そんなにくどくど説明しなくても、それくらいの知識は持っている」と抗議されるのです。「相手に適切な情報を与えようとしただけなのに…」と相談してきた若い店員がいました。「お客様の状況を見極めることも重要なんだよ。必要な情報だけを望む人も多いから」と慰めました。超がつくほどまじめな人は、悩みはじめると、とことん苦しむのでした。
つづいて優柔不断店員をご案内します。自身の判断をアイマイにしがちな彼は、お客様から「どれがいいかね?」と相談されても、「それはお客様のご判断ですので…」とお茶をにごします。複数の候補からどれを購入していただきたいという態度が示せません。あくまで判断をお客様にゆだねるのです。この態度で接客する店員は、高姿勢な相手には相性の良い店員に映ります。ただし、クレームになることが多くなります。こんな店員には「商品説明やアドバイスを求められたときの言葉も用意しておきなさい」と指導しました。接客時間が長くなるのも優柔不断店員でした。
売場には不思議と浮き立つ店員もいました。目立ち店員と呼べそうですが、そうした店員は待機姿勢が素晴らしく、いつの間にか、売場中央に立ちはじめます。自然な笑顔と快活な挨拶をします。接客機会もほかの店員より多くなります。いわゆる顧客も数多く持つようになり、売上は常に上位にいます。結構ずくめのようですが、明朗快活がマイナスに作用するときもあります。あるお客様から「あの店員さん、押しが強くて、ちょっと苦手なんだよね」とささやかれたことがあります。自分の接客応対能力への自信から、お客様が商品を見極めている時間でも、ずかずかと足を踏み込みます。商品を売る前に自分を売れという言葉がありますが、過剰になれば気の弱いお客様が近寄らなくなります。店員の立ち位置は、定期的に変えてみるべきです。長い間固定しておくと、売場の空気がよどみます。
売場に立って間もない店員にも、秋葉原では接客させています。売場には売場のルールがありますが、規則軽視店員と呼べる彼は、独自の判断で物事を片付けようとします。規則軽視店員の接客を受けた人の大半は、不快な感想を抱きます。言葉づかいや態度も接客のうちですが、彼らは実に個性的な接客を試みます。友達にでも話すように商品説明をしますし、ボールペンを指でクルリと回転させたりします。他の売場の管理職から「接客応対がなっていない」と指摘されるのは、大半が彼の接客を見られてしまった場合です。商品とは無関係のJリーグや話題となったニュースなども話す規則軽視店員をおもしろがるお客様もいます。規則軽視店員は売場に立って数ヵ月もすると、「自分はこの仕事に向いていないのでは・・・」という相談をしてきます。中規模以上の電器店になると、個人の売上ノルマを設定しますが、規則軽視店員の大半は売上ノルマに遠くおよばない成績しか残せません。成績の悪さが相談の根幹にあります。「だまされたと思って、おはようございます、お疲れさまでしたという挨拶をきちんとするようにしてみなさい。いつの間にか成績がよくなるから」と指導したものです。出勤時・退勤時の決め事を習慣にさせると、規則軽視店員の態度が変わりはじめます。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
【コラム】「売れるショップに売れる人」
・第9回 Web 2.0ビジネスで仲間と盛り上がる 【Vol.28】
・第8回 ある企業のロゴからでてきた仮説 【Vol.27】
・第7回 現代に通じる近江商人の心意気 【Vol.26】
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