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2007年1月時点の情報を掲載しています。
「元禄バブル経済」の崩壊後、台頭した商人たちの商活動に対する考え方をご存知ですか?筆者は学生のときに近世の商活動を研究していたので、この方面の文献を漁った経験があります。現在、成功している企業を見ますと、江戸時代の商人たちの言葉が重く感じられます。以下にそれらを挙げてみましょう。
まずは、「企業本来の役割」と指摘できる考えです。
「伝来の家業を守り、決して投機事業を企つる勿れ」 伊藤松坂屋家訓
「先義後利」 大文字屋下村彦右衛門
「苟も浮利に趨り軽進すべからず」 住友家家則
「一時の機に投じ目前の利に趨り、危険の行為あるべからず」 住友家家則
「売りて悦び、買いて悦ぶ」 三井殊法
「三方よし−売りてよし、買いてよし、世間よし」 近江商人
次はマーケティングで重要とされる「顧客志向」に関する江戸時代の商人の考え方です。
「物価の高下に拘わらず善良なる物品を仕入れ誠実親切を旨とし利を貪らずして顧客に接すべし」 伊藤松坂屋家訓
「我が営業は信用を重んじ、確実を旨とし、以て一家の鞏固隆盛を期す」 住友家家則
「確実なる品を廉価に販売し、自他の利益を図るべし。正札掛値なし。商品の良否は、明らかに是を顧客に告げ。一点の虚偽あるべからず。顧客の待遇を平等にし、苟も貧富貴賎に依りて差等を附すべからず」 たかしまや四綱領
「物品購求の多少に拘わらず来客は総て当店の得意なれば大切に礼儀を尽すべし。仮令一品の購求せざるも其望みに叶うべき品物のあらざるは当店の準備至らざる所なれば却て丁寧に敬礼を尽し後後の愛顧を乞うべし」 松屋呉服店訓誡
数年後に実施予定のJ-SOX法に絡み、最近、「内部統制」という言葉を異業種交流会などでよく耳にします。米国版SOX法の前提となった内部統制の枠組みは「COSOフレームワーク」です。COSOフレームワークによる内部統制は「業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、関連法規の遵守という目的の達成に関して、合理的な保証を提供することを意図した、事業体の取締役、経営者およびそのほかの構成員によって遂行される1つのプロセス」としています。また、企業の存在目的にあって、利益の追求は従であり、企業活動の主は、社会に貢献し、社会的な評価を獲得することだとCOSOは指摘しました。
日本版SOX法は、上場企業で相次いだ会計不祥事を防止する目的に立脚した法規制です。米国では1990 年代末から2000年初頭にかけ、大規模な企業会計の不祥事が相次ぎました。これを受けて2002年に米国でSOX法(サーベンス・オクスリー法、企業改革法とも)が成立しました。米国SOX法の流れに沿った法規制を、一般的に「日本版SOX法」と呼んでいます。ITに関しても、業務システム分野では、日本版SOX法に準拠したフローを構築するソリューションが提案されはじめています。
ところで、江戸の商人は商売というものをどのように考えていたのでしょうか?以下をお読みになればそれが分かります。日本版SOX法の本来の目的に沿っていると考えてしまったのは筆者だけでしょうか?
「公益を先にし、私利を後にすべし」 神野家家法
「公益を図るを以て事業経営の方針とし決して、私利に汲々たる勿れ」 藤田家 家憲
「徳義は本なり財は末なり本末を忘るる勿れ」 茂木家家憲
「臣民の本分を尽すを以て、平常の心掛けとせよ」 三井家二代宗竺家訓
どうですか?日本版SOX法時代に即した内部統制は、江戸時代の家法・家訓に学ぶべきところが多いと思いませんか。
社会貢献をも勘案した「営業力」が試される時代、社員教育の規定も改定する必要がありそうですね。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
【コラム】「売れるショップに売れる人」
・第10回 接客応対に"絶対"はないと知ろう 【Vol.29】
・第9回 Web 2.0ビジネスで仲間と盛り上がる 【Vol.28】
・第8回 ある企業のロゴからでてきた仮説 【Vol.27】
・第7回 現代に通じる近江商人の心意気 【Vol.26】
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