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2019年11月時点の情報を掲載しています。
「ポケモンGO」や「ドラゴンクエストウォーク」のような位置情報を利用したスマートフォンゲームが幅広い世代に人気を博している。ゲームだけでなく、若者の間では、友達と位置情報をシェアする「Zenly」が流行し、Googleマップや経路案内アプリも当然位置情報を利用している。位置情報はさまざまなアプリ、サービスで活用されており、現代の生活に欠かせないものとなっているのだ。
端末の位置を推定する技術を「測位技術」と呼ぶが、スマートフォンに搭載されている測位技術も年々進化を続けている。測位技術として、まず思い浮かぶのが「GPS(Global Positioning System)」であろう。GPSは、元々アメリカが軍事用として開発したシステムであり、約30個の衛星から発信される信号電波を受信することで、GPS衛星との距離を算出し、三角測量の原理で位置を決定する。GPSは、軍事用と民生用のそれぞれの信号を発信するように設計されているが、当初、民生用信号には「SA(Selective Availability)」と呼ばれる運用ポリシーが適用され、意図的に測位精度が落とされていた。しかし、測位精度の向上を求める声が高まったことや、2カ所でGPS測位を行って誤差を求め、その値を地上局からの電波で端末に送信することで測位精度を高める「DGPS(Differential GPS)」が登場したこともあり、クリントン政権下の2000年5月にSAが解除され、民生機器でもGPSを本来の精度で活用できるようになった。SA解除後のGPSの測位精度は、条件によって変わるが、数m〜数十mである。GPSの測位精度を低下させる原因の中でも一番影響が大きいのが、GPS衛星の配置や捕捉数に起因する問題だ。GPSでの測位には最低4つの衛星からの信号を受信する必要がある。端末が捕捉するGPS衛星の数が多く、それらの衛星の位置が互いに離れているほど、測位精度は向上する。しかし、市街地などでは、ビルに衛星からの電波が遮られ、捕捉できる衛星の数が減り、衛星同士の位置関係が近いものしか捕捉できなくなるため、測位精度が低下するのだ。
前述したようにGPSはアメリカのシステムであり、アメリカ依存から脱却するために、2000年代以降、EUやロシア、中国などがGPSと同様の全地球衛星系の測位システムの構築を開始した(日本のみちびきはGPS補完システムであり、全地球衛星系ではない)。EUの「Galileo」は、2005年に最初の衛星が打ち上げられ、2016年12月に初期サービスが開始された(本格的なサービスは2020年に開始予定)。ロシアの「GLONASS」は、元々旧ソビエト連邦が開発したもので、1996年には24基全ての衛星が運用開始されていた。その後、ロシア経済の崩壊に伴いシステムがダウンしていたが、2001年からシステムの修復が開始され、2011年に全世界で利用できるようになった。
スマートフォンでは、従来から「A-GPS(Assisted-GPS)」と呼ばれる測位方式を採用していた。Assistedという名称が付いているのは、GPS衛星からの電波以外に、携帯電話の基地局からの電波も利用して測位を行っているからだ。A-GPSでは、端末がどこの携帯電話基地局と通信をしているかということで、おおよその位置を絞り込み、その地点から測位可能なGPS衛星の軌道データを端末に送ることで、素早い測位を実現している。
GPSだけでは衛星数が足りず、測位精度が落ちる場合でも、他の測位システムも併用すれば、より高い精度が実現できるという考えに基づいて誕生したのが、「GNSS(Global Navigation Satellite System)」である。GNSSでは、GPSだけでなく、GLONASSやGalileoなどの測位システムを同時に利用することによって、端末から見通せる範囲の衛星数が足りずに測位できないといった事態を防げ、測位精度も向上する。スマートフォンでは、A-GPSと同様に携帯電話基地局からの電波も利用する「A-GNSS(Assisted GNSS)」が採用されている。NTTドコモのスマートフォンでは、2013年冬モデルから、GPSとGLONASSの両方を利用するA-GNSSへの対応を開始した。現在ではスマートフォンの多くが、A-GNSSに対応しており、さまざまな測位システムを利用できるように進化している。例えば、シャープの2017年春コンパクトモデルでは、GPSとGLONASSしかサポートしていなかったが、2018年1月に登場した「AQUOS Rcompact SH-M06」では、GPSとGLONASSに加え、日本のみちびき、EUのGalileo、中国のBeiDouの合計5つの測位システムをサポートしており、測位精度や安定性がさらに向上している。位置情報を利用するゲームを頻繁にプレイするのであれば、多くの測位システムをサポートする機種がおすすめだ。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
A-GNSSでは、A-GPSに比べて測位に利用できる衛星が増えるため、測位失敗の可能性が大きく減る
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