大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
|
News
|
にっぽんの元気人
|
巻頭特集
|
第2特集
|
Focus
|
コラム
|
イベント
|
バックナンバー
|
vol35以前のバックナンバー
|
2019年9月時点の情報を掲載しています。
2019年8月1日、Intelは10nmプロセスルールで製造される「Ice Lake」(開発コードネーム)こと第10世代Coreプロセッサー、11モデルの出荷を開始した。なお、今11モデルのうち6モデルがTDP(熱設計電力)15Wまたは28WのUシリーズ、5モデルがTDP 9WのYシリーズであり、すべて薄型ノートPCや2in1 PC向けの製品である。Ice Lakeは、2019年5月のCOMPUTEXにおいて発表済みだが、出荷開始にあわせてプロセッサー・ナンバーや細かな仕様が公開された。Ice Lakeは、14nmプロセスルールで製造される「Coffee Lake Refresh」こと第9世代Coreプロセッサーの後継であり、内部設計(マイクロアーキテクチャ)に大きな手が加えられている。第6世代から第9世代までのCoreプロセッサーは、Skylakeマイクロアーキテクチャがベースとなっており、クロックあたりの性能はあまり向上していなかったが、Ice Lakeでは、新世代のSunny Coveマイクロアーキテクチャに変更され、IPCが18%向上した。IPCとは、1クロックあたりの平均命令実行数であり、CPUの演算性能は、クロック(動作周波数)×IPCで表される。最近は、動作周波数の向上が難しくなり、IPCをいかに向上させるかということにCPUベンダーがしのぎを削っている。従来比18%の向上というのは、大きな躍進といえる。
Sunny Coveでは性能を向上させるために、いくつかの改良が行われているが、中でも大きいのが、「キャッシュ容量の増加」「実行ユニットの強化」「新命令セットのサポート」の3点だ。まず、キャッシュ容量だが、従来までのCoreプロセッサーは、L1データキャッシュが32KB、L1命令キャッシュが32KB、L2キャッシュが256KBという構成だったが、Ice Lakeでは、L1データキャッシュが1.5倍の48KBに、L2キャッシュが2倍の512KBに増加している。実行ユニットの強化については、実行ポートの数が8から10に増えており、最大10命令の同時発行が可能になった。各実行ユニット自体も改良されており、実行できる命令の自由度が向上している。さらに、分岐予測バッファも増えており、分岐予測アルゴリズムも改良されたことで、分岐予測精度も向上しているという。また、AVX-512やVNNIといった新しい命令セットをサポートしたことも特徴だ。AVX-512は、1命令で同時に複数のデータ同士の演算が可能なSIMD命令であり、従来のAVX2では256bit幅の演算をサポートしていたのに対し、2倍の512bit幅での演算に対応している。また、VNNIは、ディープラーニングの推論を高速化するための命令である。Ice LakeでのAVX-512とVNNIのサポートは、AI処理のパフォーマンス向上が狙いであり、ディープラーニングの推論性能は前世代に比べて2〜2.5倍になっているとのことだ。
また、Ice Lakeでは、CPUコア以外の部分も大きく強化されている。内蔵GPUの世代が第11世代になり、実行エンジン(EU)の数が最大64(旧世代は最大48)に増え、可変リフレッシュレート技術「Adaptive Sync」に対応した。さらに、IntelのCPUで初めて、Thunderbolt 3コントローラも同じダイに統合されているほか、Wi-Fi 6もサポートする。
さまざまな点が強化されたIce Lakeにより、PCのパフォーマンスや使い勝手はさらに向上する。すでに各社からIce Lake搭載薄型ノートPCや2in1 PCが発表されており、リプレイス需要が見込めるだろう。
なお、第10世代Coreプロセッサーとしては、開発コードネーム「Comet Lake」と呼ばれる製品も2019年8月21日に発表されている。こちらは、14nmプロセスルールで製造され、マイクロアーキテクチャもSkylakeベースであるが、TDPが低く、Uシリーズで6コアのモデルが用意されていることが特徴だ(Ice LakeのUシリーズは4コアまで)。Comet Lakeでは内蔵GPUも旧世代となるため、3D描画性能はIce Lakeのほうが上だ。Ice LakeがAI処理やエンターテインメント向きなのに対し、Comet Lakeはオフィス向けといえる。どちらも第10世代なので混同しがちだが、Ice Lakeは、プロセッサー・ナンバーの数字部分が4桁なのに対し、Comet Lakeは5桁となる。Comet Lake搭載ノートPCも各社から発表されはじめており、2019年末までに出そろうことが予想される。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
左が従来のSkylakeの実行ユニット、右が新世代のSunny Coveの実行ユニット。実行ポートの数が8から10に増え、実行ユニットも改良されている。
【進化するIT基礎技術の可能性】
・第41回 SSDとDRAMのギャップを埋めるOptane(オプテイン)メモリーとは?【Vol.105】
・第40回 より美しくより高精細に進化を続ける液晶技術【Vol.104】
・第39回 無線LANの高速化、安定化を実現する「メッシュネットワーク」とは【Vol.102】
・第38回 無線LAN技術のさらなる革新「802.11ac Wave2」と「IEEE 802.11ax」【Vol.100】
・第37回 5GHz動作の28コアCPUがPCに搭載?スマートフォン用SoC「Snapdragon」もさらに進化【Vol.99】
・第36回 ノートPC向けCPUとして初の6コアを実現した第8世代Core iプロセッサ【Vol.98】
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2019 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.