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2019年1月時点の情報を掲載しています。
オフィスや自宅などで無線LANを利用しているユーザーは多いことだろう。有線LANに比べると速度やセキュリティ面では劣る部分もあるが、ケーブルを繋がずにエリア内のどこからでもネットワークに接続できるのはとても便利だ。しかし、広いオフィスや2階建て住宅などでは、無線LANの電波が届きにくい場所ができてしまいがちだ。無線LANの電波が弱くなると、実効的な通信速度が大きく低下し、切断されてしまうこともある。無線LAN機器メーカーでは、無線LANの利用エリアを広げるために、電波出力の大きいハイパワータイプの無線LAN機器を販売しているが、それでも限界はある。そこで最近、注目されている技術が「メッシュネットワーク」である。メッシュネットワークとは、メッシュ(網)という言葉通り、複数のアクセスポイントが網の目のように?がって構成されるネットワークのことだ。アクセスポイント同士が相互に通信を行いながら、必要に応じて転送を行う仕組みになっており、アクセスポイントが3個以上あれば、複数の経路が形成される。
ZigBeeやZ-Waveなどの、消費電力が小さく一つのアクセスポイントの電波到達距離が短い無線通信規格では、メッシュネットワークでの利用を前提とした仕様になっているが、無線LANでは、最近までメッシュネットワークの利用は想定されていなかった。しかし、無線LANでも、より広いエリアで安定した通信を実現したいという要望に応えるために、2003年11月、IEEEに「Wi-Fi Mesh」に関するスタディグループが設立され、Wi-Fi Meshの規格標準化への取り組みが始まった。しかし、標準化に手間取り、当初IEEE 802.11sと呼ばれていたWi-Fi規格は、2012年にようやくIEEE 802.11-2012に含まれる形で正式リリースされた。
2013年頃から、主にエンタープライズ向けとしてWi-Fi Mesh対応製品が登場し始めたが、IEEE 802.11sの標準規格に準拠したものではなく、IEEE 802.11aをベースにしながらもあくまでも自社製品同士での接続のみをサポートしていた。用途としては、監視カメラや医療系、交通量監視といったビジネス用途が中心であった。2016年にQualcommが独自のメッシュ技術「Wi-Fi SON」を発表したが、これもIEEE 802.11sとは互換性のない技術である。Qualcommは、無線LANチップセットベンダーとしても大手であり、2017年以降、QualcommのWi-Fi SONを採用した無線LAN機器が各メーカーから登場し、注目を集めている。日本でも、2018年に入ってNETGEARの「Orbi」やTP-LINKの「Deco M5」、Googleの「Google Wifi」などの販売が開始されたほか、2018年8月には国内無線LAN機器の最大手であるバッファローが、新ブランド「AirStation connect」としてメッシュネットワーク対応製品の発売を開始した。これらの製品は、アクセスポイントの価格も1万円台前半が中心であり、価格的にも買いやすくなったことで、一躍注目の的となった。
メッシュネットワーク対応機器の登場以前にも、無線LANのカバーエリアを広げるために、無線LAN中継機と呼ばれる製品が販売されていたが、中継機は経路を複数にするのではなく、単に途中で無線LANの信号を中継するだけであり、実効的なスループットが低下しやすい。メッシュネットワーク対応機器なら、複数の経路から最適な経路を自動的に選択するため、実効的なスループットをあまり低下させずに、カバーエリアを広げることができることがメリットだ。メッシュネットワークは、アクセスポイントを増やせば増やすほど、より広いカバーエリアを実現できるので、2階建て住宅に住んでいる方はもちろん、ワンフロアを丸ごと使っているような広いオフィスで、場所によって無線LANの電波が届きにくいところがあって困っているという場合にも最適だ。ただし、現時点では、同じWi-Fi SON技術を採用した製品でも、ほとんどの場合、他社製品との相互接続は保証されていないため、メッシュネットワークを構築する際は、同じベンダーの製品で統一する必要がある。メッシュネットワーク対応機器市場は急速に伸びており、今後も成長が期待される。他社製品との相互接続性についても、今後は改善されていく可能性も高いので、動向を注視したい。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
バッファローのメッシュネットワーク対応製品「WTRM2133HP/E2S」。左が親機で、右の2つが子機である
【進化するIT基礎技術の可能性】
・第38回 無線LAN技術のさらなる革新「802.11ac Wave2」と「IEEE 802.11ax」【Vol.100】
・第37回 5GHz動作の28コアCPUがPCに搭載?スマートフォン用SoC「Snapdragon」もさらに進化【Vol.99】
・第36回 ノートPC向けCPUとして初の6コアを実現した第8世代Core iプロセッサ【Vol.98】
・第35回 仮想通貨の中核となるブロックチェーン技術とは【Vol.97】
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