消費税の改定や軽減税率の導入が実施され、Windows 7のサポート終了を来年の1月に控えた今、ITビジネスの投資は、やや落ち着いた感がある。パートナー様は、Windows 7のサポート終了後のビジネスについて、情報を集めながら今後の戦略を組み立てているのではないだろうか。そこで、今回の特集では、パートナー様のビジネスの拡大に役立ちそうな情報について、「ITビジネス、次の一手!」と題して総力を挙げて紹介する。 |
常に最新バージョンが提供されるWindows 10への移行は、OSマイグレーションを軸としたITビジネスを過去のものへと変える。次の戦略を考える前に、まずは次世代のITプラットフォーム、Windows 10のポイントをあらためて押さえておきたい。
2020年1月のWindows 7サポート終了がI Tビジネスに与える影響は、決して小さくない。その理由は、Windows as a Service(サービスとしてのWindows、以下、WaaS)と名づけられた、新たなOS提供方法にある。
ITビジネスはこれまで、OSライフサイクルにあわせ、PC、ソフト、周辺機器のセールスを展開してきた。
それに対しWindows 10は、年2回のリリースサイクルを通し、常に最新版OSをユーザーに提供していく。そのため、OSの切り替えを前提とした従来のビジネスモデルは成り立たなくなる。また、より短期的な視点では、Windows 7 EOS特需後の売上の落ち込みを危惧するパートナー様も多い。
今号のBPナビゲーターは、Windows 7 EOS後におけるITビジネスの次の一手を総合的に考えていくが、まずは今後のITプラットフォームであるWindows 10の特長を特に運用という観点から簡単に押さえておきたい。
まず注目したいのは、Windows 10への移行後も、これまで行ってきたようなOS移行時の検証の手間が完全に不要になるわけではない点だ。Windows 10は、原則として3月、9月の年2回、新バージョンがリリースされる。リリースサイクルがより短くなるため、Windows 7からWindows 8/8.1への進化などと比べると、バージョン間にそれほど大きな違いが生じることはないが、それでも移行に伴うアプリケーションへの影響や周辺機器のドライバー対応への不安が既に数多く報告されている。
こうした状況を受け、企業におけるWindows 10の新バージョン展開は、最小限の検証プロセスが不可欠となっている。具体的には、IT管理部門など一部部署で先行して新バージョンを導入し、実地に運用して検証を行ったうえで全社展開する方法が主流だ。
また18〜30カ月というサポート期間をフルに活用することで、バージョンアップを1、2年に一度にとどめる動きも一般化すると見られるが、下図にあるようにWindows 10のサポートライフサイクルは変則的だ。
過去のアップデートを振り返ると、3月版で大規模なアップデートを行い、9月版ではそのマイナーアップデートにとどめる傾向があることを指摘する声も多い。3月版で機能検証を進めたうえで9月版を全社展開し、1、2年間継続して運用するという形がWindows 10のリーズナブルな展開・運用方法になりそうだ。
Windows 10が登場して4年が経過しており、早めに入れ替えた部署では、ハードウェアスペック的に不満が出る頃だ。今後も、PCにはさまざまな新技術が搭載されていく。エンドユーザー様に次の一手として提案する「PCの買い替え」について解説する。
2015年7月に登場したWindows10では、WaaS(Window sasa Service)という新しい概念が採用された。これは、O S のアップグレードを新しい「製品」としてリリースするのではなく、定期的に実施・継続される「サービス」として提供し続けるというものだ。WaaSにより、Windows 10を一度導入すれば、常に最新の状態を保つことができるようになり、OSを買い替える必要がなくなった。しかし、OSが常に最新状態になるといっても、ハードウェア自体を買い替えなくてもいいということにはならない。アプリケーションのバージョンアップや扱うデータの増加に伴い、より高い性能が要求されるようになる。PCに搭載されているCPUやSSDなどのデバイスも年々性能が向上しており、最新のアプリケーションは、PCの性能向上を前提とした機能強化が行われているためだ。また、新しいインターフェイスや技術も古いP Cでは利用することはできない。
CPUに関しては、世代が1つか2つ程度新しくなっても、性能向上を体感できることは少ないが、3世代以上新しくなると、明らかに快適になったと感じる場面が多い。インテルのCPUは、ほぼ1年に1回世代が更新されているため、3年以上経過したPCはリプレースの有力候補となる。CPU以上に性能向上が著しいパーツがストレージだ。以前はPCのストレージといえばHDDが一般的であったが、ここ数年で一気にSSDが普及した。特に薄型モバイルノートPCやタブレットにもなる2in1 PCでは、薄型化・軽量化の要求が厳しいため、ほぼ全ての製品にSSDが搭載されている。SSDはHDDに比べてはるかに転送速度やアクセス時間が高速であり、快適さが格段に向上する。一度SSDの環境に慣れてしまうと、もはやHDDには戻れない程だ。HDD搭載PCで業務を行っているエンドユーザー様には、まずはSSD搭載PCへとリプレースすることを提案すべきであろう。
SSD自体も年々高速化、大容量化が進んでおり、フォームファクターの主流もHDDと同じ2.5インチから薄型のM.2へと移行している。2.5インチSSDのインターフェイスはSATA 3.0だが、M.2ではより高速なPCI Expressを利用できるため、SSDのパフォーマンスがさらに向上する。また、ノートPCのバッテリーは消耗品であり、充放電を繰り返すごとに容量が少しずつ減っていく。300〜500回ほど充放電を繰り返すと寿命とされているが、毎日外回りなどで使っていると、1年〜2年程度で駆動時間が半減することも珍しくはない。バッテリーの持ちが悪くなったら、ノートPCの買い替えを視野に入れることをおすすめする。昔は、バッテリーパックを交換できる製品が多かったが、最近の薄型モバイルノートPCは、バッテリーを交換できない構造になっているものがほとんどである。
今後、PCでの採用が増えるであろう新技術としては、USBからの給電を行うPD(Power Delivery)や5G対応、USB 3.2などがある。特にPDに関しては、対応製品が各社から登場しており、エコシステムが成立しつつある。新技術が普及するタイミングは、新しいPCへのリプレースを提案する好機だ。
サーバーインフラに関しては、その構成によってオンプレミス(オンプレ)とクラウド、そしてその中間となるハイブリッドクラウド(ハイブリッド)に大別できる。それぞれメリットとデメリットがあり、企業規模やデータ量によって最適な構成は異なる。サーバーやストレージなどのITリソースを自社内に置いてユーザー自身が管理運用するオンプレで問題になりやすいのが、扱うデータ容量の増加への対処だ。ビジネスがこれまで以上に多様化し、スピード感が増している現在、「数年後を見越したストレージの一括購入」といった従来のコスト削減手法が通用しなくなってきたからだ。そうした背景の中、注目を集めているのが、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(H C I)である。HCIは、x86サーバーにコンピューティング機能とストレージ機能を統合した仮想化基盤であり、アーキテクチャがシンプルで、コストパフォーマンスが高いことが利点だ。
クラウドは、クラウドベンダーが用意したサーバーなどのI Tリソースを必要な分だけ利用する方式であり、管理運用の手間が少なく、柔軟にスケールできることが利点だが、カスタマイズの自由度が低く、ベンダーが提供していない機能は利用できないことが欠点だ。使うリソースに応じて利用料を払う形になるため、小規模のシステムならコストも安い。しかし、大手クラウドサービスでも障害が生じる可能性はゼロではないので、機密性の高いデータの取り扱いには注意すべきだ。クラウドはリソースの増減が容易なので、必要な処理能力やストレージのサイジングを検証し、オンプレの導入スペックを決めるという使い方も考えられる。
ハイブリッドは、オンプレとクラウドを組み合わせた構成であり、それぞれのメリットを生かすことができるが、システム構成が複雑になりがちである。最近は、HCIの導入によってオンプレ環境を最適化することを、ハイブリッド実現の最初のステップとして捉える企業も増えてきている。
このように、純粋にクラウドだけでシステムを構成するのでなければ、HCIを導入することによって、パフォーマンスやストレージ不足といった問題を解決できる場面は多い。また、HCIはアーキテクチャがシンプルで、複数のベンダーの製品を組み合わせる必要がないため、従来の仮想化インフラに比べて管理運用の負荷が大きく低減される。働き方改革という言葉が言いはやされる世の中ではあるが、一向に働き方改革が進まないのがサーバー管理者や情シス担当者であろう。HCIの導入は、管理運用負荷が減るため、サーバー管理者の働き方改革にもつながる。また、HPE SimpliVityのように、常時バックアップを高速に行える製品なら、大規模災害時の事業継続計画(以下、BCP)対策も万全である。
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