インテルOptaneメモリーとは、インテルとMicronが共同で開発した次世代メモリー技術「3D XPoint」を採用した製品のブランド名だ。3D XPointは、ビットラインとワードラインが直角に交わり、その交点にメモリー素子が配置されるクロスポイント構造を採用していることと、メモリ素子として抵抗の変化によってデータを記録する相変化メモリーを採用していることが特徴である。相変化メモリーは、加熱と冷却の仕方を変えることで結晶相とアモルファス相を自由に行き来させることが可能なカルコゲナイド合金が、それぞれの相によって電気抵抗が異なることを利用して、データを記録する素子だ。相変化メモリーは、不揮発かつ高速という優れた特性を持つため、次世代メモリーとして長らく研究されていたが、本格的な実用化は、Optaneメモリーが初となる。
Optaneメモリーは、メインメモリーとして使われるD R A Mと、ストレージとして使われるNANDフラッシュメモリー(SSD)のギャップを埋める製品であり、ストレージクラスメモリーとも呼ばれる。Optaneメモリーは、現在主流のDRAMやNANDフラッシュメモリーに対して、さまざまな面でアドバンテージを持つ。インテルの発表では、Optaneメモリーは、NANDフラッシュメモリーに比べて1000倍高速かつ1000倍耐久性が高く、DRAMに比べて10倍高密度であるとうたっている。また、NANDフラッシュメモリーとは異なり、ビット単位のアクセスが可能で、消去せずに上書きが可能なことや、レイテンシーが非常に小さいことも利点だ。さらに、NANDフラッシュメモリーと同じく不揮発性を持つので、電源を切ってもデータが消えてしまうことはない。
現在、製品化されているOptaneメモリーは、OptaneメモリーM10( 以下M10 )とOptaneメモリーH10( 以下H10)の2モデルに大別できる。M10は、
HDDと組み合わせて使うためのキャッシュ専用SSDであり、HDD搭載PCに追加することで、PCのパフォーマンスが大きく向上する。M10は、M.2対応モジュールとして提供され、M.2 2280および2242規格に対応する。容量は、16GB/32GB/64GBの3モデルが用意されている。インテルの検証によると、HDD搭載PCにM10を追加することで、ビジネスアプリケーションの性能は2.1〜2.2倍、ゲームのロード速度は3.9〜4.7倍、大容量メディアファイルの読み込みは1.7〜3倍も高速化されたという。OSの起動時間も、33.3秒から12.1秒へと約2.8 倍高速化された。H10は、Optaneメモリーと大容量のQLC 3D NANDを1枚のM.2 2280対応モジュールに搭載した新世代SSDであり、現時点では、32GB Optane+1T BQLC 3D NAND、32GB Optane+512GB QLC 3D NAND、16GB Optane+256GBQLC 3D NANDの3モデルが用意されている。H10は、高速なOptaneメモリーを、大容量QLC 3D NANDのキャッシュとして使うことで、革新的な性能と大容量を両立させたSSDである。H10は、一般的な512GB TLC SSDに比べて約1.4倍、インテルの512GB QLC SSDに比べて約1.9倍のパフォーマンスを実現しているとのことだ。さらに、TLC SSDと比べて、ビジネス文書の展開は2倍、ゲームの開始時間は60%、GIMPプロジェクトファイルの展開は5倍高速化されたという。H10の主なターゲットは、高性能ノートPCであり、今年夏にも搭載製品が登場する予定だ。なお、データセンター向けプロセッサ「第2世代Xeon スケーラブル・プロセッサ」では、Optaneメモリーを採用した「Optane DC Persistent Memory」をDIMMソケットに装着して、メインメモリーとして使うことも可能だ。
text by 石井英男 1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
OptaneメモリーとQLC 3D NANDを1枚のM.2 2280対応モジュールに搭載した「インテルOptaneメモリーH10」