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2020年3月時点の情報を掲載しています。
経済産業省が2018年に発表した『D Xレポート 〜I Tシステム「2025年の崖」克服とD Xの本格的な展開〜』が今改めて注目されている。日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの遅れに警鐘を鳴らす同レポートにおいて、「2025年の崖」という言葉で表現される弊害は、実は我々が常日頃、目にしている基幹システムの課題にほかならない。
エンジニアが自嘲交じりに口にする言葉の一つに、“秘伝のタレ”がある。東京の老舗うなぎ屋の中には、江戸時代からつぎ足しつぎ足し使ってきたというタレが自慢の名店がある。しかしこの場合、継ぎ足されるのは必要に応じて書き足されてきたソースコードだけに始末が悪い。その結果、旨いのか不味いのかもよく分からないが、変更を加えると何が起こるのか分からないため放置するほかないシステムが生まれることになる。
実際のところ、長く企業で稼働する業務システムの中には、「なぜこんな機能があるのかだれも分からない」「どんなプログラムが動いているのかよく分からない」といった、“秘伝のタレ”化したレガシーシステムは少なくない。その第一の課題は、運用コストの増大だ。ある調査では、システムの老朽化、複雑化によるシステム障害で生じる経済損失を年間4兆円におよんでいるという。
I Tの力で製品やサービス、ビジネスモデルを改革するD Xが大きな注目を集める中、日本企業の取り組みの遅れを指摘する声は多い。その最大の要因は、“秘伝のタレ”化したレガシーシステムにある。それこそが「2025年の崖」の本質だ。
D Xの基盤となるシステムの全面的な見直し、刷新には巨額のコストが必要になる。だがある調査によると、日本企業のIT関連予算の80%は現行システムの維持に費やされているという。そこから浮かび上がるのが、レガシーシステムの維持に四苦八苦し、新たな一手を打ち出せない日本企業の姿だ。
2015年時点で基幹系システムが20年以上稼働する企業の割合は20%。仮に現状のまま運用を続けたとするとその割合は2025年には60%に及ぶ。それによる経済損失は年間12兆円に及ぶとDXレポートは推定する。
日本企業の多くは、1980〜1990年代に世界に先駆けてコンピュータを経営に導入し、大きな成果を挙げた。それがなぜ、このような事態に陥ったのだろうか。レポートでは大きく二つの理由を指摘する。
一つは、エンジニアの所属先がユーザー企業ではなく、ベンダー企業に偏っているという日本特有の事情である。ベンダーによる受託開発を前提とした人材の割り振りは、ユーザーにITシステムのノウハウが蓄積されにくい構造につながるからだ。またこの構造は、ベンダー企業によるエンジニア確保の困難さにもつながる。確かに、最新テクノロジーを学んだエンジニアにとり、秘伝のタレと揶揄されるレガシーシステムのお守りは苦痛でしかないはずだ。
もう一つが、1980年代以降、大規模なシステム開発を手掛けてきた人材の引退である。継ぎ足しにより属人化したシステムを知るエンジニアの退職は、システムのブラックボックス化に直結する。1982年に22歳でキャリアをスタートしたエンジニアは今年60歳。今の状態が続く限り、ブラックボックス化するシステムは今後急速に増え続けることは間違いない。
「2025年の崖」という言葉が広がった背後には、ERPシステムのデファクトスタンダードであるSAP ERPが2025年に保守期限切れを迎えるという事情もある。だがここまで見てきた通り、その言葉が示す課題は2025年に限られたものではない。
DXレポートはDX実現シナリオとして、2020年までにシステム刷新の経営判断を行うと共に、2021〜2025年をシステム刷新集中期間(DXファースト期間)とし、計画的なシステム刷新を進めるというロードマップを提案する。必ずしもそのスケジュールに従う必要はないが、多くの企業にとり、“秘伝のタレ”化したレガシーシステムの刷新が急務の課題であることは間違いないだろう。
『DXレポート 〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜』より
■既存システムの現状と課題
■既存システムの問題点の背景
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