BPNavigator to GO - コラム＞IT Trend Watch

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2009年5月時点の情報を掲載しています。

　UQ CommnicationsによるモバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」がサービスインして2ヶ月あまりが経過した。本稿執筆時点ではまだサービス料が無償の「お試し期間」ではあるが、条件さえ良ければ10Mbpsの通信速度が得られるなど、モバイルブロードバンドの片鱗がうかがえる。当初は32bit版のWindowsのみだった対応もMac OS Xのサポートが加わった。64bit版Windowsへの対応もそれほど遠い話ではないだろう。
　一方、その弱点も明らかになりつつある。まだ開始間もないサービスだけに、エリアカバーが十分ではなく、サービスマップ上で利用可能になっていても利用できない場所、「穴」が存在する。こうした穴が生じる理由の1つは、その利用する周波数帯域が、既存の携帯電話よりも高く、局所的なサービスを前提とした無線LANとほとんど変わらない2.5GHz帯であることだろう。電波は周波数が高くなればなるほど直進性が増し、遮蔽物等による減衰の影響を受けやすくなる。建物の陰への回り込みや屋内への浸透性という点ではどうしても見劣りしてしまう。
　もちろん、こうした問題はUQ Communicationsも認識しているハズであり、サービスの有償化へ向けて、さらなる基地局整備をお願いしたいところだ。屋内への浸透性の改善という点では、WiMAXアダプタと無線LANルーターを組み合わせた「ゲートウェイセット」の提供を開始した。ゲートウェイセットを窓際に設置し、屋内へは無線LANを使ってネットワークを提供しようという製品だ。外出する際は、WiMAXアダプタだけを取り外して持ち出すことも可能だから、独身者であれば、おウチのインターネットとモバイルインターネットをこれ1つでまかなうこともできる。
　このようにまだヨチヨチ歩きであるにもかかわらず、モバイルWiMAXに大きな期待が寄せられるのは理由がある。既存のサービスに比べて最大で40Mbps（理論値）と本格的なブロードバンドサービスであること、全世界での普及を視野に入れた標準規格であること、規格の推進者に世界最大の半導体メーカーであるIntelが名を連ねていることなどはその一端だ。当初はオプションに過ぎなかった無線LAN機能があっという間にノートPCの標準機能になったように、Intelの製造技術という裏付けがあれば、WiMAXの低価格化と低消費電力化にも大いに期待が持てる。
　もう1つWiMAXサービスが既存の無線アクセスサービスと異なるのは、そのビジネスモデルが携帯電話型でないことだ。端末をキャリアが独占的に販売する携帯電話と異なり、モバイルWiMAX端末はキャリアであるUQ Communications以外に、PCベンダを含むさまざまな会社が販売することになっている。販売時に一定期間の利用を前提にした契約を要求されることもない。いわばオープンな市場が用意されると考えられる。
　ユーザが望むことは、世界中のあらゆる場所で、リーズナブルな価格で一定以上の帯域を利用可能な無線ネットワークアクセスを簡単に利用したい、ということであり、技術的な違いやビジネスモデルの差異は、本来どうでも良いことだ。しかし、携帯電話技術をベースにしたネットワークアクセスサービスが、まだこの願いをかなえていない以上、WiMAXにも十分なチャンスがあるに違いない。

元麻布春男
IT系雑誌やインターネットのコラムなどで広く活躍するフリーライター。
執筆歴は15年以上におよぶ。1960年生まれ。

【IT Trend Watch】

・第8回　Windows 7のSKU構成が明らかにそこから見えるMicrosoftの戦略とは　【Vol.43】

・第7回　獅子の中身の蟲といかに闘うか　【Vol.42】

・第6回　SDD = 半導体ドライブが牽引するIT機器市場の未来　【Vol.41】

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