BPNavigator to GO - コラム＞最新ITキーワード

　大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。

2012年1月時点の情報を掲載しています。

クラウドの基礎技術となる、仮想化。この技術は、サーバを含むあらゆるITリソースがその対象となり、中でもネットワーク仮想化が注目されている。仮想化対応のネットワーク機器はもちろん、転送制御をサーバで行うOpenFlow（オープンフロー）への関心が高い。

　仮想化とは、ITリソースを抽象化して、実際の構成をソフトウェアやユーザの目から隠す技術の総称である。もっともよく知られているのは、1台のサーバを複数のサーバに見せかけるサーバ仮想化。アプリケーションが必要とする処理能力を自由自在に生み出せるので、機器の使用効率を高めたり、設備の準備に要する期間を短縮したりといった効果がある。
　その他のITリソースについても、仮想化はユーザに大きな恩恵をもたらす。ストレージを仮想化すればデータベースの容量に応じてストレージやディスクを柔軟に割り当てられるし、ネットワークを仮想化すれば通信の需要に見合ったネットワーク構成への切り替えをシステム停止せずに行える。
　ネットワーク仮想化は、以前からさまざまなレベルで行われ、クラウドを構築するルータにも、仮想化は欠かせない。例えば、プライベートIPアドレス（192.168.*.*など）をグローバルIPアドレスに自動変換するネットワークアドレス変換（NAT）。インターネットなどのIPネットワークを仮想的な専用線として使う仮想専用網（VPN）や、実際の配線形態とは異なる構成のLANを構築する仮想LAN（VLAN）も、ネットワーク仮想化である。
　また、ルータやスイッチなどのネットワーク機器でも仮想化への対応は盛んだ。複数のユーザにサービスを提供する商用データセンターの場合、ユーザの加入・解約・構成変更のたびにネットワーク配線をやり直すのでは手間がかかってしまう。そこで、内蔵OSの仮想化機能でポート構成などを自由自在に変えられるルータやスイッチを採用することによって、運用管理コストの抑制がねらえる。大規模なデータセンターやサーバルームを持つ企業の場合も、同じ理由から仮想化対応ルータ／スイッチを導入することが多い。
　複数のサーバを一つの筐体に収めるブレードサーバの中にも、通信ポートを仮想化しているものがある。これらの製品では、ブレード（個別サーバ）の通信ポートと筐体側通信ポートとの関係付けを専用の管理ソフトウェアで自由に変更できる仕組みを採用。能力増強や障害対応のためにブレードを抜き差ししても、その影響がOS、ミドルウェア、アプリケーションに及ばないようにしている。
　さらに、ソフトウェア定義ネットワーク（Software Defined Network：SDN）という新しい方式に対応した製品もいくつかのベンダーからリリースされている。SDNとは、ソフトウェアによって構成や設定を自由に変えられる仮想ネットワークのこと。その代表的な方式が、OpenFlowだ。
　OpenFlowのポイントは、従来はスイッチが担っていた転送制御をサーバで行えること。このサーバはOpenFlowコントローラーと呼ばれ、Linuxなどの汎用OS上で動作するソフトウェアが転送制御を行う。OpenFlow規格に適合していれば、コントローラーとスイッチの組み合わせは自由なので、企業のニーズに合わせて、最適な選択が可能だ。
　OpenFlowでは、OpenFlowコントローラー側のソフトウェアしだいでさまざまな機能が実現できる。ネットワーク仮想化も純粋にソフトウェア的な方法で行うので、低価格帯のスイッチでも利用可能。複数ベンダーのスイッチを一括コントロールするのも容易なので、ネットワーク設備を増強する際も、既設製品との相互運用性をあまり気にする必要はない。
　管理のしやすさに加え、安価なスイッチでネットワークが構築できるメリットは、これまで予算の都合で、導入を躊躇していた中堅・中小のエンドユーザ様に朗報だろう。

本紙の購読申込み・お問合せはこちらから