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2012年5月時点の情報を掲載しています。

電子書籍市場の拡大には、機器とコンテンツの充実だけでなく、業界標準の電子書籍データ形式の存在も鍵となる。その最有力候補と目されるのが、EPUB 3.0。このEPUB形式の電子書籍を自作するためのツールも増えてきた。

　国内では、2010年前後から電子書籍の市場が急速に成長している。その要因としては、専用機器（リーダー）、タブレット端末、スマートフォンなどのハードウェアが出揃ったことと、出版社などが多種多様なコンテンツを提供し始めていることが挙げられる。市場の拡大を加速するもう一つの要因となるのが、業界標準の電子書籍データ形式だ。コンテンツごとにデータ形式が異なっていたのでは、電子書籍を手軽に楽しむことはできない。特定のメーカーやコンテンツプロバイダに限られないデータ形式が存在して初めて、電子書籍の市場は最大限に広がっていくのだ。
　そうした業界標準の電子書籍データ形式になると期待されているのが、EPUBという規格だ。「EPUB」とは、electronic publication（電子出版物）の略。規格を策定しているのは、国際電子出版フォーラム（IDPF:International Digital Publishing Forum）というアメリカの業界団体である。
　初版のEPUB 2が登場したのは、2007年9月のこと。1999年に策定されたOpen eBook Publication Structure（OEB）を仕様のベースにしていたため、最初から「2」のバージョン番号が与えられた。2010年には、改良版となるEPUB 2.0.1が登場。さらに、2011年5月には新版のEPUB 3.0 Proposed Specification（勧告仕様）、同10月にはEPUB 3.0 Final Specification（最終仕様）が発表されている。EPUB 3.0の最大の特長は、多言語に対応していることにある。EPUB 2.0.1までは欧米系の言語のみを想定した仕様になっていたが、EPUB 3.0では日本出版協会（JEPA）からの提案に応えて「縦書き」「禁則処理」「ルビ」といった日本語特有の表記方法をサポート。アラビア語やヘブライ語のように右から左に書く言語も取り扱えるようになった。
　現時点でE P U B形式の電子書籍を読める機器は、AppleのiPad/iPhone/iPod touch、ソニーのReader、EPUB対応ソフトウェアが組み込まれたAndroid端末など。Androidを搭載していてもEPUB非対応の電子書籍リーダーがあるので、注意が必要だ。PCの場合は、WebブラウザのGoogle ChromeやFirefox+EPUBReaderでEPUBコンテンツを読むことができる。
　昨日、世界的な大ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズ全７巻の英語版が電子書籍として発売された。その電子化の際に採用されたのが、このEPUB形式だ。互換性の高いEPUB形式を採用した背景には、全世界の公共・学校図書館に電子書籍貸し出しサービスを提供する目的もあったようだ。電子書籍版「ハリー・ポッター」の販売は、小売業者を介さずに作家が消費者に直接販売するビジネスモデルを確立。これにより、EPUB形式の電子書籍の普及が大きく進み、また電子書籍の販売モデルに大きな影響が出ると予想されている。
　実はEPUB形式の電子書籍は、企業や個人が手軽に自作できるのだ。例えば、Adobe Indesignや一太郎2012承なら、作成した文書をEPUB形式に保存できる。また、Word文書ファイルをEPUB形式の電子書籍に変換するためのツールも市販されている。そのため、ビジネスの分野でも「従業員向けの業務マニュアルやトレーニング教材」「顧客向けの製品カタログや技術文書」として電子書籍を手軽に制作し活用できる。
　今後、電子書籍の本命として普及が見込まれるEPUB形式。今から準備を進めておけば、大きな普及の波が来たとき、パートナー様のビックビジネスとなる可能性がある。

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