VoLTEとは、Voice over LTEの略であり、LTEのパケット通信網を利用して音声通話を実現する技術である。LTEとは、Long Term Evolutionの略で、最新の携帯通信規格である。当初は、第3世代(3G)から第4世代(4G)へのスムーズな移行を目指す規格として策定されたため、3.9Gと呼ばれることが多かったが、現在はLTEを4Gと呼ぶことが公式に認められたため、4Gと呼んでいる携帯電話事業者もある。3Gまでの携帯電話は、回線交換方式とパケット通信方式の両方をサポートしているが、LTEは、パケット通信しかサポートしていない。その代わり、パケット通信に最適化しているため、3Gに比べて電波利用効率が格段に高い。ただし、LTE対応端末は3Gにも対応しており、現時点ではまだ3GエリアのほうがLTEエリアよりも広いため、音声通話は3Gの回線交換を使っている。VoLTEは、インターネット電話(IP電話)と同様に音声をパケットに変換し、LTEのパケット通信で伝送するため、電波利用効率が大きく上がる。「電波利用効率が上がる=携帯電話事業者のインフラコストの削減」となるため、音声通話料金が下がることが期待でき、音声通話も含めた定額制や準定額制プランが誕生する可能性もある。VoLTEの利用には対応端末の登場が必要になる、NTTドコモとKDDIは、四半期決算会見において2014年度中にVoLTEサービスを開始するという方向性を示しており、サービス開始時期や料金体系の明言はされていないものの、早ければ今年後半にもVoLTEサービスが開始されるだろう。
もう一つの重要キーワードが「MVNO」だ。MVNOとは、Mobile Virtual Network Operatorの略で、日本語に訳すと仮想移動体通信事業者となる。その名の通り、携帯電話やPHSなどの物理的な移動体回線網を自社では持たず、実際に保有する他の事業者から借り受けて、通信サービスを行う事業者である。MVNOは決して新しい言葉ではなく、日本通信が2001年に日本初のMVNOによるデータ通信サービスを開始しているほか、IIJやNTTコミュニケーションズなどもMVNO事業を展開している。MVNOによるサービスは、主にスマートフォン向けデータ通信サービスとして展開されており、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルといった自社で移動体回線網を持つ事業者(MNOと呼ぶ)に比べて、通信データ量や通信速度などに制限があるものの、月額料金が1,000円程度と安いことが特徴だ。MVNOは、回線を借り受けるMNOに対し、利用量に応じた接続料金を払っているが、その接続料金の基準は総務省の指針によって決められている。総務省は今年3月にその算定基準を変更し、2013年度分から前年度の半額程度と大幅に下げる方針を明らかにした。接続料金が半額程度になれば、現在月額1,000円程度で提供されているMVNOサービスの価格を、さらに1〜2割下げることが可能になると予想されている。MVNOサービスの価格が下がることで、MNOの料金プラン(月額6,000円前後)との差がさらに広がるため、競争が激化し、MNOの料金プランの値下げが促されることになるだろう。
2014年は、VoLTEとMVNOにより、携帯電話やスマートフォンの料金の常識が変わる年になりそうだ。月額料金が下がることで、契約回線数の増加やスマートフォンなどの移動体通信を前提としたソリューションへの注目が見込まれる。新たなビジネスチャンスとして期待したい。
text by 石井英男 1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。