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2016年3月時点の情報を掲載しています。
PCやスマートフォンなどに搭載されている無線通信技術の中でも、広く使われているのが無線LANである。無線LANの標準規格はIEEEによって定められており、IEEE802.11bやIEEE 802.11gなどのように、IEEE 802.11+英字という形になる。現在は、IEEE 802.11nやIEEE802.11acが主流であり、前者は最大600Mbps、後者は最大1.7Gbpsでの通信に対応した製品が発売されている。最大1.7Gbpsというと、非常に高速なようだが、この値はあくまでも理論値であり、実効速度はその半分以下しか出ないのが普通だ。さらなる高速化を目指して、2013年1月に策定された規格がIEEE 802.11adである。IEEE 802.11adの最大の特徴は、利用する周波数帯にある。これまでの無線LANは、2.4GHz帯または5GHz帯を利用しているのに対し、IEEE 802.11adでは60GHz帯という非常に高い周波数帯を利用する。60GHz帯も2.4GHz帯/5GHz帯と同じく、免許不要でグローバルで使える周波数帯である。なお、60GHz帯の波長はミリメートルオーダーになるため、ミリ波と呼ばれることもある。
一般に周波数が高くなるほど広い帯域を使えるため、高速通信には有利だが、直進性が強くなり、距離による減衰も大きくなる。WiGigはこのIEEE 802.11adをベースにしており、最大7Gbpsという超高速通信を実現する。WiGigはもともと「Wireless Gigabit Alliance」という業界団体が標準化や認定プログラムの策定を行っていたのだが、2013年3月に無線LAN機器の技術策定を行う業界団体「Wi-Fi Alliance」に吸収された。業界団体が統合されたことで、Wi-Fiの認証とWiGigの認証を一緒に行うことが可能になり、WiGigの普及に弾みが付くことが予想される。前述したように、WiGigは60GHz帯という高い周波数帯を利用するため、通信範囲は約10mと現行の無線LANに比べると短い。また、人の身体などに遮られると届きにくくなるので、WiGigでは電波を特定の方向に集中的に照射する「ビームフォーミング」技術を利用している。WiGigは、主に宅内での機器や身につけるウェアラブル機器での活用を想定しており、現行の無線LANの置き換えというよりは、相互に補完する役割を果たすことになるだろう。つまり、2.4GHz帯/5GHz帯/60GHz帯のトライバンドに対応し、電波が十分に届く近距離では通信速度の速いWiGigを使い、移動するなどして電波が届きにくくなったら、Wi-Fiにシームレスに切り替えてそのまま通信できるようになるわけだ。
WiGig対応チップセットやモジュールは、Qualcomm AtherosやIntelなどからすでに出荷が開始されており、CES 2016の会場でもWiGig対応無線LANルーターの参考展示が行われていた。また、2016年2月18日〜26日に成田国際空港でWiGigスポットの実証実験が実施された。成田国際空港と共同で実証実験を行ったパナソニックによると、WiGigスポットの実証実験は「世界初」とのことだ。この実験では、3つのWiGig対応モジュールを内蔵したアクセスポイントが用意され、コンテンツサーバに格納された映像コンテンツをダウンロードするというものだ。1つのアクセスポイントには最大12人の同時接続が可能で、1ユーザーあたりの実効速度は1Gps以上を実現する。この速度なら2時間の動画も10秒程度でダウンロードできることになる。2016年度中にも、WiGig対応チップセットやモジュールを搭載したノートPCやタブレット、スマートフォンが登場するとみられており、今年はWiGig市場が本格的に立ち上がる年となるだろう。古くなったPCのリプレイスで、WiGig対応PCを導入するのなら、あわせて無線LANルーターや無線LANアクセスポイントなどもWiGig対応のものへ更新することをお勧めしたい。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
成田国際空港に設置されたWiGigスポットの様子(イメージ)
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