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2016年11月時点の情報を掲載しています。
M icrosoftは2016年12月8日、中国深セン市で開催された「WinHEC Shenzhen 2016」において、Qualcommのプロセッサ「Snapdragon 」で動くWindows 10を2017年に投入することを発表した。このWindows 10は、スマートフォンやタブレット向けのWindows 10Mobileではなくフル機能版のWindows10であり、既存のIntelプラットフォーム向けのWindows 10と同等に動作する。Windows 10 Mobileは、元々ARMベースのSnapdragonで動作していたのだが、Windows 10で導入されたユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)用アプリしか動作せず、いわゆるWin32アプリを利用することはできなかった。しかし、2017年に登場するSnapdragon対応Windows 10では、従来のWin32アプリもそのまま動作する。WinHECの講演でも、Win32アプリのAdobe Photoshopがエミュレーションで動作するデモが行われた。Intelのx86 CPUとARMベースのSnapdragonでは、命令セットに互換性がないが、バイナリトランスレーションと呼ばれる技術によって、リアルタイムに命令を変換しながら実行しているのだ。命令変換のオーバーヘッドがあるため、ARMネイティブにコンパイルされたアプリケーションを実行するのに比べると、性能は低下するが、Microsoftの担当者は、Officeなどのプロダクティビティアプリケーションなら実用的な速度で動作すると語っている。
さて、Snapdragon搭載のWindows 10デバイスとはどのようなものになるのだろうか? 最初のSnapdragon搭載Windows 10デバイスは、2017年前半に投入予定の次世代プロセッサ「Snapdragon 835」を搭載することになる。Snapdragon 835は、最新の10nmFin FETプロセス技術で製造され、従来のSnapdragon 820/821に比べて処理速度が27%向上しているにもかかわらず、消費電力は最大40%も低減されている。チップのサイズも小さいので、より薄く軽く、ファンレスでバッテリーが長持ちする2-in-1 PCやスマホサイズのデバイスの登場が期待される。2-in-1 PCやタブレット向けとして、Intelは低消費電力にフォーカスしたAtomをリリースしていたのだが、2016年5月にAtomの新規開発の中止を表明した。Snapdragonは、Atom撤退によって空いた領域とその少し上の領域をカバーするものと思われる。また、Snapdragonは、優れた通信機能を備えていることも特徴だ。現行のSnapdragon 820でも、最大600Mbps対応のLTEに対応したX12 LTEモデムが統合されているため、Snapdargon 835ではより高性能な通信機能が統合されるであろう。また、Snadpragon 835では最新の急速充電技術「Quick Charge 4」がサポートされる予定で、わずか5分の充電で、数時間利用時間を延ばすことが可能になる。
このように、Snapdragon搭載のWindows 10デバイスは、Intel製CPU搭載のWindows 10デバイスと比べても十分に競争力のある製品となるだろう。ただし、価格面については、Snapdragonの最上位製品は、Atomと比べても同等以上であると推定されるため、Snapdragon搭載だからといってデバイスの価格が大きく下がることは考えにくい。Snapdagonを搭載する可能性が高そうな製品としては、MicrosoftのSurfaceシリーズが挙げられる。現行のSurface 3は、CPUとしてAtom x7-Z8700を搭載しているが、前述したようにAtomの新規開発は中止されているため、その後継製品でSnapdragonを採用するというのはあり得る話だ。Snapdragonという新たな選択肢の登場によって、Windowsエコシステムのさらなる拡大が期待できるだろう。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
Snapdargon 835のサンプルチップ。サイズも小さいため、より小さく軽いWindows 10搭載デバイスの登場も考えられる。
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