政府が推進する「働き方改革」は、法整備を含めた制度に注目が集まっている。
報道の中心も具体的な残業の上限時間であったり、上限を超えた場合の罰則であったりと、視点がずれてしまい、「働き方改革」を推し進めるうえで必要な情報が見当たらない現状がある。有識者の見解でも、「働き方改革」を目的とするのではなく、働き手がいかに力を発揮できるシステムを構築できるかが成功のポイントだと話す。今回の特集は、現在、働き方を改革するために、まず必要となるコミュニケーションツールについて紹介したい。 |
労働力人口の減少に伴う働き手不足が顕在化する中、多様な働き方の実現と労働生産性の向上を大きな柱にする働き方改革は、日本企業が今後避けて通ることができない課題ともいえる。制度としてではなく、生きた仕組みとして提案していくうえで、まずは取り組みの概要を見ていきたい。
政府が掲げる働き方改革は、これまでの日本の労働環境を大きく変えるものとして注目されている。安倍晋三首相が議長を務める働き方改革実現会議が今年3月28日に長時間労働の是正や同一労働同一賃金をはじめとする、非正規雇用者の処遇改善を含む実行計画をまとめたことを受け、政府は今年の国会に関連法案の改正案を提出し、2019年度からの実施を目指している。
実行計画に盛り込まれた9分野で特に注目が集まるのが、罰則付き残業上限の設定や一日の勤務終了時から翌日の始業時まで一定時間の休息時間を求めるインターバル規制の導入による長時間労働是正への取り組みだ。計画では、労使協定を結ぶ場合でも残業時間は年720時間(月平均60時間)に制限されるとともに、一時的に事務量が増大する場合でも、1カ月で100時間未満、2〜6カ月の平均で80時間以内(いずれも休日出勤含む)という上限に収めることが求められる。
その一方で働き方改革の背景に、労働力人口の減少に伴う働き手不足という大きな問題があることを忘れるべきではないだろう。外国人労働者の全面的な受け入れなどドラスティックな改革がない限り、日本の労働力人口は確実に減っていく。現実問題として、人手不足が大きな経営課題になっているエンドユーザー様も少なくない。現時点では建設業、運送業に顕著だが、この傾向は今後ホワイトカラーにも広がることが予想される。
働き方改革が掲げる、子育てや介護と仕事の両立を含む柔軟な働き方の実現や労働生産性の向上は、今後日本企業の多くが直面するこうした課題を乗り越えるための施策でもある。その実現のために求められるのが、ITの活用であることは間違いない。柔軟な働き方を実現するためのテレワークがその代表例だ。また、海外企業との熾烈な競争の中で「乾いた雑巾をさらに絞る」と例えられるような合理化・効率化が進んだ製造業と比較した、日本のホワイトカラーの労働生産性の低さは以前から指摘されてきた。この課題を乗り越えるうえで求められるのもやはりITの力である。IT化が遅れる中小規模以下のエンドユーザー様への導入支援は、今後さらに重要になるはずだ。
ただし働き方改革を「制度」として取り入れるだけでは、エンドユーザー様のメリットはそれほど大きくないだろう。生きた仕組みとして整備できてはじめてそれは意味を持つ。実行計画には、テレワーク導入やIT活用を支援する助成金等の制度整備も掲げられている。こうした助成制度も活用し、ぜひともエンドユーザー様にとって意義ある働き方改革の提案を行いたい。
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