導入コストが比較的リーズナブルで、導入から運用が手軽に行えるNAS(Network Attached Storage)は、中堅・中小企業の業務において、なくてはならないものになっている。その一方で、個人で広く利用されているクラウドストレージは、セキュリティ対策やサービス向上を経て、ビジネス活用の進出が目覚ましい。そこで、現在のNASとクラウドストレージの関係性を整理し、パートナー様がエンドユーザー様にお知らせすべき提案をまとめてみた。 |
各種ファイルのスムーズな共有を可能にするファイルサーバーは、NAS(Network Attached Storage)の登場により、より簡易な導入が可能になった。さらに今日、その選択肢はクラウドストレージへと広がっている。すでに個人ユーザーの間では、デバイス間のデータ同期にクラウドストレージを利用することは常識化している。ではNASが主流になった企業内のデータ共有手段も、将来的にクラウドストレージへと移行するのだろうか?
長期的に見るなら、オンプレミスからクラウドへという潮流が今後も続くことは間違いない。ただし、現時点のこととして考えるなら、クラウドストレージへの移行提案は時期尚早と言えるかもしれない。
その理由としてまず挙げられるのは、オンプレミスと比べた際のレスポンスの違いである。インターネット通信環境はリッチ化が進んでいるが、社内L A Nと較べると見劣りするのが現実だ。それは、体感上の通信速度の大きな差につながる。こうした体感差は特に、リアルタイム情報共有を目的としたオンラインストレージ上のファイル編集・入力作業において顕著にあらわれる。実際、クラウドストレージへの移行がユーザーの不評につながったという例も少なくない。そう考えると、テレワーク推進など「いつでも」「どこでも」というクラウドの特長に基づく業務見直しを伴う提案を除けば、あえていま、クラウドストレージへの全面移行を提案する意義はさほど大きくない。
また、企業のクラウドストレージ利用は、国外データセンターの利用に伴うカントリーリスクも課題の一つだ。今年5月にE Uで施行された「E U一般データ保護規則」(GDPR)に伴う影響はその一例である。個人情報の域外移転を原則として禁じるG D P Rにより、E U域内のデータセンターのデータの取り扱いには一定の制約が課されることになる。こうしたリスクもまた、クラウドストレージへの全面移転を難しくしている。
その一方でクラウドストレージは、取引先など社外スタッフも含めた情報共有が可能になるなど、NASにはない特長を備えている。そこでエンドユーザー様へのクラウドストレージ提案の第一歩として検討したいのが、NASとクラウドストレージの二刀流提案である。双方のメリット・デメリットを整理すると、実は両者が“競合”ではなく“補完”関係にあることが分かる。
NASの特長としてまず挙げられるのは、社内LANに接続するだけでファイル共有が可能になる手軽さだ。繰り返しになるが、オンプレミス運用による優れた操作感も重要なポイントになる。一方でその性格上、取引先や社外のプロジェクトメンバーまで含めた情報共有基盤としての運用は困難である。
逆に、クラウドストレージのメリットとしてまず挙げられるのが、多様な社外メンバーとそれぞれの立場や役割に応じ、スムーズかつセキュアな情報共有が可能になる点だ。またスモールスタート・スケールアウトをはじめ、容量の増減が自由に行える点も重要なポイントである。一方で、レスポンス速度などの問題から、テンポラリーファイルの保管場所としては適さない。
提案としてまず浮かび上がるのは、主力ストレージとしてのN A Sと社内外のファイル共有基盤としてのクラウドストレージの使い分け提案である。これまでファイル共有はメール添付が一般的だったが、添付可能なファイル容量には制約がある。こうした場合、無料のダウンロードサービスを利用することも多いが、管理の観点では、その安易な利用は決して好ましくない。
さらにメール添付やダウンロードによるファイル共有の場合、各人がそれぞれローカルで編集作業を行うことになるため、バージョン管理が常に大きな課題にならざるを得ない。法人向けクラウドストレージの利用は、これらの課題のスマートな解決を可能にする。
特に注目したいのが、ファイルへのアクセス権限の設定をアカウント別にきめ細かく設定する機能が備わるサービスも少なくない点だ。それにより、オンプレミスで運用するN A S同様の運用がクラウドストレージでも可能になる。
二刀流提案のもう一つが、データバックアップ先としてのクラウドストレージ利用だ。
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■NAS VS クラウドストレージ
■使い分け提案のイメージ
■法人向け主要クラウドストレージの比較
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