Windows 7のサポート終了が迫る中で、Windows 10への入れ替え案件に対応するパートナー様も多いのではないだろうか。Windows 10へ移行されたエンドユーザー様からは、「PCの動作が速くなった」、「セキュリティ対策に不安がなくなった」とのご意見をいただく半面、「WaaS(Windows as a Service)の概念が良くわからない」、「頻繁なアップデートでPCの調子に不安がある」といった声も多く聞こえてくる。そこで、今回の特集では、2015年に導入されたWindows 10のWaaSについて、その仕組みを解説すると共に長期的に安定したPC運用を実現する方法について紹介する。 |
従来のアップグレードと更新プログラム提供を一元化するWaaS(Windows as a Service)は、ITビジネスの常識を変えただけでなく、企業の情報システム部門の新たな課題にもつながっている。まずはその運用上の課題について考えていく。
Windows 7の延長サポートが2020年1月に終了する。現実的な観点でその唯一の移行先になるのがWindows 10だが、従来のクライアント用のWindows OSとの間には一つの大きな違いがある。それは、2015年のリリースに併せてマイクロソフトが打ち出したOS製品提供の新概念、WaaS(Windows as a Service)にほかならない。
「サービスとしてのWindows」と訳されることも多いWaaSを理解する上で重要になるポイントは、従来のアップグレードと各種更新プログラム提供を一元化し、インターネットを経由してより短いサイクルで提供する点にある。
これまでクライアントPCで運用するWindows OSは、2、3年に一度のサイクルで新しいバージョンがリリースされてきた。それに対しWindows 10では、従来のセキュリティ更新プログラムに加え、従来のバージョンアップに相当する機能更新プログラムが半年に一度のサイクルでインターネットを介して提供される。
現在、Windows 10ユーザーには、「品質更新プログラム」(Quality Update)と「機能更新プログラム」(Feature Update)という2種類の更新プログラムが提供されている。品質更新プログラムは従来のセキュリティパッチに相当し、原則として毎月第2水曜日にリリースされる。もう一つの機能更新プログラムはWindows 10の機能拡張を目的とした更新プログラムで、年2回、3月・9月のリリースが予定されている。それにより、Windows 10は今後も継続的に進化を続けていくことになる。Windows 10が最後のWindows OSと呼ばれる理由もここにある。
こうしたWaaSの概念は、ITビジネスの常識だけでなく、エンドユーザー様のPC運用の常識にも大きな変化をもたらしている。それは大きく二つの面から捉えることができる。一つが更新プログラムの同時ダウンロードによるトラフィック渋滞である。WaaSでは、原則として全P Cに同じタイミングで更新プログラムが提供される。品質更新プログラムで1GB程度、機能更新プログラムでは数GBになるため、ダウンロードのネットワークへの負荷は決して小さくない。そしてもう一つが、半年に一度というサイクルで繰り返されるOS機能更新に対応した運用検証の手間だ。
Windows 10の機能更新プログラム適用では、すでにさまざまなトラブルが報告されている。その一例が、Wi - Fiドライバを認識しないというトラブルだ。ローカルにファイルを保存しない運用の場合、それにより全社のPC機能そのものが停止してしまうだけにその影響は深刻である。
マイクロソフトは機能更新プログラムを先行して提供するWindows Insider Programを利用した動作検証を経て、最新版を全社展開することを推奨しているが、管理者の負荷を考えると半年に一度の更新に確実に対応していくのはあまり現実的ではない。こうした状況を受け、マイクロソフトはWaaSの運用見直しを継続的に行っている。その一例が、サポート期間の見直しである。
すでに紹介した通り、現在、Windows 10は、半期に一度のサイクルで機能更新が行われ、各バージョンは「バージョン1803」「バージョン1809」など、リリース年月に基づきナンバリングし管理されている。各バージョンのサポート期間は、原則としてリリース日から18カ月間。WaaSの恩恵を継続して受け取るには、サポート期間内に新バージョンへの移行が必要になる。逆に言うと、半期に一度のアップデートを最大2回スキップしても最新バージョンへの移行は可能だ。そのため、これまでは18カ月間を最長に、機能延長プログラムの適用延長を行うことができた。だが、従来のOS移行サイクルを考えると、18カ月は極めて短い。こうした中、マイクロソフトは、2018年9月、大企業向けのWindows 10 Enterprise、文教向けのWindows 10 Educationについてはサポート期間を30カ月間に延長することを発表している。
Windows 10のよりスムーズな運用を実現する上で大きなカギを握るのは、最長18カ月(Windows10 Enterprise、Windows 10Educationは30カ月)の機能更新プログラムの適用延長であることは間違いないが、実はもう一つ、更新プログラムの適用を行わないという選択肢もある。
現在、機能更新プログラムには二つの提供モデルが用意されている。一つは「Semi-Annual Channel」(SAC:半期チャネル)で、その名の通り、新バージョンのリリースサイクルに応じ、半期に一度更新プログラムが提供される。これはWindows 10発売時に設定されていた個人向けのCurrent Branch(CB)、企業向けのCurrent Branch for Business(CBB)が2017年に統合されたものになる。
もう一つが「Long - Term Servicing Channel」(LTSC:長期サービスチャネル)。これまで「Long Term Service Branch」(LTSB)と呼ばれていた提供モデルに相当し、POSをはじめとする組み込み機器やIoT端末など、ミッションクリティカルなシステムの利用を前提にしている。
LTSCのサポート期間は、サポートはメインストリーム5年、延長ストリーム5年の計10年で、期間中は品質更新プログラムのみが随時提供される。提供サイクルは、2、3年に一度が予定され、2018年11月にリリースされたWindows 10 Enterprise LTSC2019が現時点の最新版になる。
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