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2015年5月時点の情報を掲載しています。
PCの歴史は、小型化(ダウンサイジング)の歴史と言い換えてもよい。1990年代は、タワーケースを採用したデスクトップPCが主流であったが、1990年代後半からノートPCのシェアが年々増加し、2000年には初めて国内のPC出荷台数において、デスクトップPCをノートPCが逆転した。ちなみに、アメリカ市場でノートPCの出荷台数がデスクトップPCを上回ったのは2008年であり、国土が狭い日本では、特にPC小型化のニーズが高いのだ。ノートPCも登場当初はA4ファイルサイズで重量も3kg近かったが、年々小型軽量化が進み、1kgを切る製品も珍しくはなくなっている。さらに最近は、液晶サイズが8インチ程度のWindowsタブレットや筐体のフットプリントがCDケースよりも小さい超小型PC規格「NUC」準拠製品も人気を集めており、小さなPCへのニーズは依然として根強い。
そのPC小型化の最終形態ともいえるのが、「スティックPC」である。スティックPCとは、文字通りスティック状のPCであり、サイズは100×40×10mm程度、重量は50g程度しかない。スマートフォンよりも小さい、まさに手のひらサイズのPCなのだ。スティックPCには、HDMI出力端子が用意されており、液晶ディスプレイやテレビのHDMI入力端子に接続して利用する。また、USB 2.0ポートやMicroSDカードスロットを備えており、キーボードやマウスを接続することが可能だ。サイズは非常に小さいが、CPUとしてAtomを搭載し、2GBのメモリを搭載、ストレージは32GBまたは64GB、OSとしてWindows 8.1 with Bingを採用と、スペックとしては8インチ前後のWindowsタブレットとほぼ同等であり、Webブラウズやメールチェックはもちろん、Officeなども問題なく動作させることができる。無線LANやBluetoothもサポートしているので、ワイヤレスキーボードやマウスを利用することも可能だ。
スティックPCの元祖であるマウスコンピューターの「m-Stick MS-NH1」が発売されたのは2014年12月5日であり、今からわずか5カ月前のことだ。その1カ月後の2015年1月に、Intelが「Compute Stick」という名称のスティックPCを市場投入することを発表。CPUベンダーであるIntelも力を入れているとうことで、一気にスティックPCへの注目が集まった。その後も、ほぼ同等のスペックを持つスティックPCが各社から発売されており、歴史は浅いが、ひとつの製品カテゴリとして定着した感がある。
スティックPCは、ポケットなどに気軽に入れられるサイズにもかかわらず、実用的な性能を備えたPCであり、価格も2万円前後とリーズナブルであることが魅力だ。スティックPCは、その小ささを活かした、さまざまな活用が可能だ。例えば、家庭で使うなら、リビングの大画面テレビに接続して、家族で一緒にWebページやネット動画を見るといった使い方がすぐに思い浮かぶ。また、気軽に持ち運べるので、PCのない実家に帰省する際なども、スティックPCと無線LANルーターを持っていけば、重要なメールが来ていないか、気にする必要はなくなる。ビジネスにおいても、スティックPCが活躍する場面は多い。例えば、飲食店などにある液晶テレビにスティックPCを接続すれば、デジタルサイネージの出来上がりだ。客先でプロジェクターを利用してプレゼンテーションを行う場合でも、スティックPCがあれば、わざわざノートPCを持ち歩く必要はない。また、泊まりがけの出張に行く場合でも、ノートPCと一緒にバックアップ用のPCとしてスティックPCを持って行けば、ノートPCにトラブルが発生して使えなくなっても、ホテルの部屋のテレビにスティックPCを接続して、仕事の続きや報告書などを作成することが可能になる。アイデア次第で、スティックPCの可能性はまだまだ広がるだろう。現在、販売されているスティックPCは、CPUにAtomを採用しているが、Intelは2015年後半か2016年に、Core Mを搭載した上位モデルを投入する予定だ。Core M搭載なら、最新の2-in-1 PCやUltrabookに負けないパフォーマンスを実現できるので、スティックPCをメインマシンとして使うといったことも十分に考えられる。もちろん、スティックPCが登場したからといって、WindowsタブレットやUltrabookなどのWindowモバイルPCがすべてスティックPCにとって代わられるわけではないが、スティックPCとモバイルPCをあわせて利用することで、その応用範囲や利便性、信頼性などは大きく向上する。これまで、オフィスのPC環境を一新する場合、ノートPCを一括導入するのがポピュラーであったが、今後はスティックPCを絡めた導入プランが重要になってくるであろう。
text by 石井英男
1970年生まれ。ハードウェアや携帯電話など のモバイル系の記事を得意とし、IT系雑誌や Webのコラムなどで活躍するフリーライター。
IntelのスティックPC「Compute Stick」。サイズは小さいが中身は立派なPCであり、冷却ファンも内蔵している。
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