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2007年5月時点の情報を掲載しています。
Web 2.0というキーワードを目にする機会が多くなってきた。4月16日にサンフランシスコで開催されたWeb 2.0 Expoによって、IT市場もWeb 2.0をキーワードとしたビジネスや技術が広がると考えられている。しかし、Web 2.0という言葉は、そのイメージだけが先行して、実際のビジネスやサービスに結びついていると実感できない人も多いはずだ。そこで、今回はWeb 2.0型サービスの中でも、特に注目されている無料のサービスについて、その実用性と危険性について考えてみたい。
宣伝効果生むWeb 2.0のコミュニティ
Web 2.0が旧1.0と違う大きな点は、「参加型」の形成にある。日本では、mixiがその代表として紹介されることが多い。従来のホームページ制作に比べて、誰でも気軽にコメントやメッセージをアップロードして、互いにディスカッションやコミュニケーションを広げられる点が、Web 2.0の大きな特長となっている。加えて、そうしたサービスの多くは無料で提供されている。民間放送のような広告収入を中心としたビジネスモデルによって、サービスがコミュニティを形成し、そのコミュニティが視聴率のようになって、スポンサーを呼び込む。その循環が積極的な方向に進むと、そのサイトやサービスは拡大していく。
サービスを利用する個人の立場ではなく、そのサイトに広告を出そうとする企業の側になって考えてみよう。広告主側は訴求したい商品や誘導したいサイトの特長に合わせて、コミュニティやサイトのサービスを検討し、利用者層のニーズに合う広告を出すことで、テレビや新聞とは異なる宣伝効果が期待できる。これをWeb 2.0の市場では、「ネットワーク効果」と呼ぶようだ。単にバナーやリンクを提供するだけではなく、そのコミュニティで話題として取り上げてもらうことで、インターネット規模での口コミ効果が期待できるというわけだ。
こうしたマーケティングの手法は、まだはじまったばかりだが、米国では急速に発達している。「ネットワーク効果」を活用したマーケティングキャンペーンが成功すれば、事業規模の小さな会社でも大企業に匹敵するだけの宣伝効果を生むことも可能になるのだ。
タダほど安いものはない?
インターネットの世界では、短期間で製品やサービスのシェアを取るために「無料」キャンペーンを採用する例が多い。データの閲覧ができるソフトを無料で配布しておいて、そのデータを編集したり配信するソフトから収益を得る、といったビジネスモデルが一般的だ。シェアを取ることが、その先のビジネスにとって大きな意味を持つから、無料の配布でも採算が取れるのだ。一方のWeb 2.0型のサービスでは、広告収入が大きな原資になっている。実際、Office Liveでも、ドメイン名の取得や維持にかかるコストは、マイクロソフトがOffice Liveのサイトから得られる広告収入によって賄うと発表している。その他のサービスの多くも、広告収入を原資としてサービスを提供している例が多い。
こうしたサービスは、果たして永遠に無料で提供し続けてくれるのだろうか。それは、誰にもわからない。ある程度のシェアが得られたら、サービスの更新時に会員制に移行することも考えられる。企業として経営を続けていく限りは、利益を出してビジネスを維持する使命があるからだ。従ってサービスの利用者側にも、ある程度のリスクの覚悟は必要になる。それが不安であれば、しっかりしたサポートとサービスに対する対価を払ってシステムを利用した方がいい。ソフトウェアの開発やサービスの提供には、必ずコストがかかるのだから、それを無料で利用するからには、何らかの代償が求められる。
マイクロソフトもOffice LiveでWeb 2.0型ビジネスに参入
これまで、ソフトウェアといえばライセンスを販売する方法が一般的だった。あるいは、販売後のアップグレードやサービスによって、顧客から対価を得てきた。そのため、ITを導入する企業でも、そうしたコストをIT投資と考えていた。しかし、W e b2.0型のサービスでは、個人であれば無料で使えることが多い。また、企業であっても、これまでのようにシステムを購入して構築する「作るIT」に比べて、かなり安価に利用できる「使うIT」が実現する。もちろん、なんでもかんでもWeb 2.0型がいいというわけではない。多くのWeb 2.0型サービスでは、個人のIDやデータはサービスを提供する側のサーバで管理する。利便性は高いものの、盗難やシステム障害などの被害も懸念される。実際に、あるサイトのメモ帳サービスでは、システムの障害によって、3日間も登録したデータが呼び出せないトラブルも発生している。個人の利用であれば、あくまで自己責任として片付けられてしまうので、バックアップなどを保管していなければ、データが失われてしまうことになる。
それでも、インターネット経由で利用できるサービスの魅力は多い。オンラインで複数の利用者が情報を共有したり、出先のインターネットカフェからでも利用できるサービスは、個人を中心に利用者は増えている。
こうした背景から、マイクロソフトでも企業を対象としたOffice LiveというWeb 2.0型のサービスを開始した。Office Liveでは、法人でも個人でも、無料でインターネットのURLとホームページを持てる。試しに、筆者も「www.yunto100.com」というサイトを登録してみたが、あらかじめ決められたデザインを選んで文字を編集するだけで、オリジナルのホームページを作成できた。利用したソフトは、Internet Explorerだけだった。
こうしたサービスは、いわゆるASPの進化系だと考える意見もある。無料にはならないものの、インターネットを組み合わせたサービスやシステムの拡大は続いている。今後のIT活用を考えるときに、パッケージを購入してインストールして使う、という従来の方法だけではなく、オンラインを活用した「使うIT」の存在も無視できないのだ。
田中 亘氏
筆者のプロフィール/筆者は、IT業界で20年を超えるキャリアがあり、ライターになる前はソフトの企画・開発や販売の経験を持つ。現在はIT系の雑誌をはじめ、産業系の新聞などでも技術解説などを執筆している。得意とするジャンルは、PCを中心にネットワークや通信などIT全般に渡る。2004年以降、ITという枠を超えて、デジタル家電や携帯電話関連の執筆も増えてきた。
Office Liveでホームページを製作する画面。
Webブラウザだけで簡単にできる
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【コラム】「業務改革・改善のためのIT活用とは」
・第12回 日本版SOX法に向けた準備 【Vol.31】
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