iPodに代表される携帯デジタルオーディオ機器の普及は、高性能なヘッドホンやスピーカーなどのアクセサリ市場も活性化させている。音源がアナログからデジタルになっても、その音を聞くのは人の耳。その耳に音を届ける重要な存在が、スピーカーやヘッドホンなどのアナログ機器になる。同じように、PCを活用したビジネスでも、文書や画像がデジタル化されても、その情報を誰かに見てもらうためには、やはり「紙」というアナログなメディアの存在が鍵を握っている。 情報は誰かに見せてはじめて価値になる パソコンが小型化され持ち運びが便利になり、携帯電話がデータ通信を当たり前のように行い、あらゆる情報がデジタル化されていく中にあっても、蓄積され加工された情報を端的に第三者に見せる方法としては、やはり「紙」の力は強い。オフィスの中でも、ペーパーレス化が進んでいるとはいえ、大切な会議やプレゼンテーションの場では、やはりスライドの情報を紙に印刷して配布する。また、高性能な大型ディスプレイが普及してきても、壁にポスターを貼った方が、情報やメッセージは確実に伝達できる。特に、小売業やサービス業では、最新の情報を伝達する手段として、「紙」のメディアに頼るケースが多い。スーパーの特売情報や、旅行会社のお勧めツアーに、不動産情報とか新着アルバムの案内など、物やサービスを売る「現場」では、いかに顧客に対して、その気持ちをつかむための情報を的確に伝えるかが、ビジネスの成長を大きく左右する。 確かに、インターネットや携帯電話の普及によって、情報はすべてデジタル化して携帯端末やネットに配信することで、多くの人たちに同時に伝えることは可能になった。しかし、最近ではデジタル情報が溢れ過ぎて、携帯電話に着信したメールマガジンや新着情報をこまめに見る人は少なくなっている。また、ネットで商品を選ぶ人たちは、一方通行の情報だけで判断することなく、複数のサイトや情報を比較して、自分が納得するまで購買行動を起こさない。それに対して、店頭やショッピングモールのような場所では、「何か」を求めている潜在的な顧客が多く集まる。そうした人たちに対して、アナログ的ではあっても、「紙」に代表される情報発信は効果的だ。ただ、昔のような模造紙にマジックで書いたような情報では、人を振り向かせることはできない。情報やデザインが溢れている現在では、たとえプロフェッショナルが制作したものではなくても、それなりに人目を引いて効果のある「紙」の出力が求められる。 ビジネスで注目されている大判プリンタの活用 綺麗な印刷をするための道具といえば、パソコンとプリンタのセットになる。最近のプリンタは、オフィス用の高性能なレーザープリンタと、低価格なインクジェットプリンタの二極化が進んでいる。ビジネスでは、主にA4版を中心としたレーザー出力が、個人では写真や葉書サイズのカラー出力が多く使われている。これらの需要の他に、一部の専門的な市場では、A3サイズよりも大きなカラー出力が、ビジネスで活用されている。いわゆる大判印刷と呼ばれる用途で、これまでは印刷業が得意とする分野だった。しかし、A3からB0、あるいは50インチや60インチという大きなサイズの印字に対応したインクジェット方式のプリンタが登場してきたことで、印刷ではなくプリンタ出力で対応するケースも増えてきた。 例えば、家庭用のカラープリンタでは、A4サイズまでしか出力できないので、そこに何か情報を印字して店頭や壁に貼っても、注目されることは少ない。しかし、全く同じ情報をA0やB0といった大きな紙に出力すると、それだけで注目度は一気にあがる。WordやPowerPointで作った簡易なPOPでも、大判プリンタで大きく出すだけで、全く違う効果が得られるのだ。これまで、大判のPOPやポスターというと、印刷までに何段階もの工程を経ていたために、情報の鮮度が低かったり、大手メーカーが制作してくれたものを貼るしかなかった。それに対して、パソコンと大判プリンタの組み合わせならば、日常的な印字の感覚で、手軽に手早く大判のPOPやポスターを作って貼り出せるようになる。これが、ビジネスにとっては、大きな効果を期待できるのだ。 大判プリンタ選びで注目すべき3つのポイント それでは、実際に大判プリンタをビジネスに導入しようと考えたときに、どんな点に注目すればいいのだろうか。そのポイントは3つある。ひとつは、コストパフォーマンス。次がサイズとメディアの種類。そして、ソフトの充実の3点である。 まず、コストパフォーマンスでは、大判プリンタの製品ラインを理解しておく必要がある。多くのメーカーでは、二種類の製品ラインを用意している。印刷業やフォトグラファーなどの利用に耐える高性能な機種と、普及型の高速モデルになる。一般的なビジネスでは、後者の高速モデルが適している。本体の価格が安価であるだけではなく、利用するインクの色数が少ないので、印字も速く一枚あたりの消耗品コストも安くなる。また、インクが少ないので色の調整も容易で、入門機としても適している。 次にサイズとメディアの種類だが、理想としては出力したい最大サイズに対応した機種を選びたい。ただ、それほど頻繁にA0やB0といった出力をしないのであれば、もっとも多く利用するサイズでとどめておいてもいい。なぜなら、大判プリンタの中には、分割ポスター印刷という機能を備えていて、A3の紙を4枚とか9枚とか組み合わせて、大きなサイズのポスターやPOPを印刷できる機種もあるからだ。むしろ、注目するべきは、印刷可能な紙などのメディアの種類の豊富さだろう。紙だけではなく、特殊コート紙や布のようなシートに印刷できると、垂れ幕や旗なども自作できるようになる。壁に貼るだけではなく、天井から垂らしたり風になびかせるというのも、視覚的な効果を期待できる。 そして、機種選びで大切なのは、対応するソフトの充実度になる。先の分割ポスター印刷もそうだが、大判出力のためには、プリンタドライバの性能が問われる。通常のプリンタドライバでは、単にWordでA0やB0と指定しても、綺麗な印字は得られない。大きなサイズで出力しても文字や画像が綺麗に出力されるようにソフトウェア的な補正が必要になる。また、POPなどの制作では、Office系のソフトを使うよりも、専用ソフトを使う方が便利で効果が高い。それは、年賀状を作るのにWordよりも葉書ソフトの方が便利であるのと同様だ。 こうした3つのポイントを考慮して、大判プリンタをビジネスに導入すれば、顧客の注目度を確実に向上させることはできる。そこから先のビジネスの成功は、注目された後で、購買につながるだけの魅力的なサービスや情報を提供できるかどうかにかかっている。