大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
Up Front Opinion
|
Another side Talk
|
巻頭特集
|
Open Source Solutions
|
ライセンス
|
IT活用
|
売れるショップ
|
ビジネストレンド
|
米国IT事情
|
イベント
2007年11月時点の情報を掲載しています。
薄型テレビのトレンドが、その名の通り、「薄型化」に移ってきた。
言葉の意味からいえば、当たり前の話なのだが、この数年の薄型テレビのトレンドは、薄さよりも大画面化、低価格化に焦点が当たっていた。もちろん、このトレンドはこれからも重要なものになるだろう。しかし、これからは薄型化のトレンドが一気に進展することになる。
その片鱗は、10月に開催されたアジア最大の家電展示会であるCEATECの主要各社の展示から見てとることができる。
シャープは薄さ20mmという次世代液晶テレビを展示。日本ビクターも最薄部37mmという液晶テレビの試作品を展示し、2008年前半にも欧州で発売すると発表。そして日立製作所も19mmという液晶テレビを参考展示して見せた。なかでも、目を引いたのがソニーの有機ELテレビだ。薄さ3mmという圧倒的な薄さに来場者の目は釘付けになった。12月からは、11インチの世界初の有機ELテレビを20万円で市場投入。パーソナルテレビという用途で販売する考えだ。
一方、展示会場以外で注目を集めたのが、会期2日目のカンファレンスで、西和彦氏のナビゲーターのもと行われた「未来予測2007-2020 -過去の延長線上に未来は無い-」において初公開されたPTA(Plasma Tube Array)方式による大型ディスプレイだ。
元富士通研究所フェローであり、カラープラズマテレビの父と呼ばれる篠田プラズマの篠田傳氏が開発したもの。その篠田氏が公開したのは、43インチ相当となる縦100cm×横50cmの試作品。フィルム基板によって、ディスプレイ部の薄さは約1mm。ディスプレイ部の重量は約800gという軽量化を実現している。さらに、基本となる1m×1mのモジュールをつなぎ合わせることで、論理的には無制限にディスプレイサイズを拡張することが可能だという。「150インチから300インチといったサイズが、50〜60Kgの重量で済む。しかも、消費電力は200w程度。さらに、フレキシブル性があることから、円柱や曲面のある壁にも張り付けるといった使い方ができる」(篠田氏)という。
薄型への進化は、大きな意味がある。篠田氏が指摘するように、薄型化によって、テレビはあらゆるシーンへと、用途が広がるのは明らかだ。
ブラウン管テレビは、どうしても一家や一部屋に一台が精一杯だった。それは厚みの制限があったからだ。これが、液晶やプラズマなどの薄型化によって一家に複数台となり、持ち運べるテレビも登場した。ワンセグケータイの出荷比率が今年度下期には50%に達するとの予測が出ていることからも、それが現実のものになっていることがわかる。
そして今後、さらに薄型化が進展すると、窓がある場所や壁面にもディスプレイが設置されることになる。そうなると、これまでのテレビの常識であった一家に一台どころか、一人一台といった計算式すら当てはまらなくなるほどの市場創出が期待される。
メーカーにとってみれば、大画面化は一部屋に一台の普及戦略だが、薄型化は一部屋に複数台の提案が可能になり、テレビ需要を拡大する起爆材料にもなる。薄型化のメリットは、メーカーにとって大画面化よりも魅力的なものといえる。シャープの片山雄社長は、「薄型テレビは、大画面化と価格の競争から、薄型化、軽量化、省電力化といった領域へと競争の範囲が広がった。これによって、壁掛けテレビや収納型テレビなど、新たな生活シーンを提供できるようになり、情報の窓としての役割がますます果たされるようになる」と語る。
テレビがある空間すべてを演出するというビジネスチャンスがメーカーに訪れるというわけだ。薄型化によって創出されるビジネスは計り知れない。
大河原 克行
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、'01年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊アスキー(アスキー)などで連載および定期記事を執筆中。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社刊)、「松下電器変革への挑戦」(宝島社刊)など。
【コラム】「ビジネストレンド最前線」
・第15回 インテルが巣鴨で見せたシニア向けPCへの本気ぶり 【Vol.34】
・第14回 無料オフィスソフトはどんな影響をもたらすのか 【Vol.33】
・第13回 ユーザー動向調査に見る企業のIT意欲と課題 【Vol.32】
・第12回 現場指向が強まるビジネスインテリジェンスの現状 【Vol.31】
本紙の購読申込み・お問合せはこちらから
Copyright 2006 Otsuka Corporation. All Rights Reserved.