2019年は、Windows 7 のサポート終了に伴うPCのリプレース、元号の改元、消費税増税・軽減税率制度の導入など、エンドユーザー様にとって解決しなければならない課題の多い年だった。2020年は、働き方改革への本格的な取り組みやビッグイベント開催に伴うセキュリティ対策などをキーワードとした課題解決が求められる。そこで、パートナー様が提案すべき課題と解決法を紹介する。 |
2019年はWindows 7のサポート終了への対応があり、ITビジネスは好調のうちに終始した1年だった。その一方で今後は、主力OSのWindows 10への移行が整うと、OS EOSに伴うソフト・ハード需要を前提としたビジネスからの移行が強く求められる。2020年の新たな一歩を考える前に、まずは昨年1年間のITビジネスを振り返ってみたい。
2020年、ITビジネスは、どんな1年になるのだろうか。それを考える前に、まずは2019年を簡単に振り返っておこう。
そのトピックとしてまず挙げられるのが、今年1月のWindows 7、Windows Server 2008のサポート終了を受けたEOS商戦であることは間違いない。EOSに伴いITビジネスは大きな恩恵を得たが、それが需要の前倒しにすぎないことは以前のWindows X PES商戦を考えても明らかだ。またWindow sasa Serviceを掲げるWindows 10への移行は、OSマイグレーションにあわせたハードのリプレースという従来のビジネスモデルの終息でもある。2020年がこれまで以上に新たな取り組みが求められる1年になると予想される。
次に注目したいのが、昨年4月の働き方改革関連法の施行だ。大きく「長時間労働の是正」「非正規と正社員の格差の是正」「多様な働き方の実現」からなる働き方改革において、特に注目されているのが長時間労働の是正である。
労働基準法に基づく残業時間の上限は以前から定められてきたが、労使協定を結ぶことで事実上青天井の状態が続いてきた。それに対し、働き方改革関連法では残業時間を「月45時間、年360時間を原則とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)を限度」にすることが定められた。この残業規制は昨年4月に大企業に先行施行され、今年4月からはいよいよ中小企業にも施行される。
ITビジネスの観点では、5月の元号改元に関する手順の二転三転を思い起こす方も少なくないだろう。10月の消費税増税も昨年1年を振り返るキーワードの一つ。それに伴う軽減税率制度導入による会計システム更新もトピックの一つだ。
それとも関連して大きな注目を集めたのは、政府が力強く推進するキャッシュレス化の動きだ。特に消費税増税後9カ月にわたり行われるキャッシュレス消費者還元事業は、キャッシュレス化推進の大きな役割を果たしていると見られている。従来のクレジットカードや電子マネーに加え、「〇〇ペイ」と総称されるQRコードによるスマートフォン決済ソリューションの台頭も注目ポイントの一つだ。
既に慣例化するキーワードではあるが、異常気象も大きなトピックの一つだった。気象庁の統計によると、昨年の年平均気温は1998年の統計開始以来、最も高温だったという。それ以上に特に東日本・北日本に在住の方であれば、昨秋、相次いで日本列島に接近・通過した超大型台風の影響が強い印象として残る方も多いはずだ。
それに伴う交通機関の計画運休もトピックの一つ。あらためてBCP策定やテレワークの重要性を実感したエンドユーザー様も多かったのではないか。
残業規制の中小企業への施行により、多くのエンドユーザー様にとって、働き方改革は待ったなしの課題になる。セキュリティやBCP対策といった普遍的なテーマだけでなく、今後は通信環境の進化など、企業を取り巻く環境の変化に伴う新商機にもぜひ注目したいところだ。ここからは今年注目したいテーマとそれに関連するキーワードをひも解いていきたい。
昨年大企業に施行された残業規制は4月以降、中小企業にも施行される。今年のITビジネスにおいて、まず注目すべきテーマは「働き方改革」にある。既に触れたとおり、事実上青天井だった残業時間に上限が定められた点が今回の改正の目玉。違反した場合、経営者や責任者に「6カ月以下の懲役」または「30万円以下の罰金」が科されるおそれがあるだけでなく、社名の公表は今後の雇用に大きな影響を与えるだけにその影響は甚大だ。
働き方改革提案には、大きく二つの方向がある。一つは生産性の向上、もう一つが残業の抑制である。生産性向上において効果が大きいのがテレワーク導入。そのキーワードとしてまず挙げられるのが「モバイル活用」だ。具体的には、SIMフリー/LTE対応2 in 1 PCやタブレットとMDMによる効果的なモバイルデバイス管理の組み合わせ提案になる。
もう一つのキーワードが「コミュニケーション」である。対面コミュニケーションを軸にした従来型の働き方からテレワークへの移行では、電話とメールに代わる新たなコミュニケーションの仕組みが求められる。ビジネス向けSNSツールやWeb会議システム、スムーズなファイル共有の仕組みなど、必要なツールをパッケージ化して提供するOffice 365は具体的提案の一例になるだろう。
生産性向上という観点では、「RPA/AI活用」もキーワードの一つ。PCを使った複雑な定型業務を自動化するRPAは、定型業務に追われる職場に効果的。AIはOCRと組み合わせることで、手書き文字の識別精度向上にも活用されている。
働き方改革提案のもう一つの方向性が、「残業の抑制」という観点になる。IT資産管理ツールなどによる毎日一定時刻のPC強制的ログオフはその具体例の一つ。ただし、強制力のある抑制策は、自宅に仕事を持ち帰る“隠れ残業”につながるだけに注意が必要である。
LED化と組み合わせた照明制御ソリューションによる、毎日一定時刻の消灯も注目される対策の一つ。自動消灯後も自席周辺の照明を手動で再点灯できるように設定することで、よりソフトな抑制策として運用することが可能だ。
働き方改革では、「勤務実態の可視化」もキーワードの一つ。特にテレワーク導入企業には勤務状況の客観的把握が重要な課題になる。また現在、勤怠管理を自己申告で行うなど、勤務実態にそぐわないタイムカード打刻が行えるようなエンドユーザー様の場合、その改善が今後強く求められることになるだろう。
例えば、100万人を超える教員が働く、全国の公立校の大部分も、自己申告による勤怠管理が行われる職場の一つ。時間外手当に替えて、一律の手当を加算する給与形態をとることがその理由である。教員の心の病が社会問題化する中、文部科学省は勤務実態の客観的な把握を各自治体に指示している。
2020年に「働き方改革」に次ぐテーマとして挙げたいのが「セキュリティ対策」。企業にとって普遍的なテーマの一つだが、今年はいわゆる「五輪リスク」があることがその理由だ。
世界的イベントである五輪の開催は、愉快犯や政治的目標を掲げた攻撃者にとり格好のターゲットである。五輪運営にITが大きな役割を果たすようになったのは2012年のロンドン五輪と言われるが、2週間のその期間中、公式サイトに2億件を超える不正なアクセス要求があったという。ロンドン五輪ではそのほか、スタジアムの電力供給システムへのDDoS攻撃からチケット転売をかたるフィッシング詐欺まで多種多様なサイバー攻撃が確認されている。
2016年のリオ五輪では公式サイトだけでなく、州政府や警察、銀行などにターゲットは拡大。その際、監視カメラなどのネット接続機器がDDoS攻撃の踏み台になったことが報告されている。2018年平昌冬季五輪では、大会サイトに登録されたユーザー名、パスワードのリストを組み込んだ高度なマルウェア攻撃により、大会サイトのシステムに実際に障害が発生している。
東京五輪も期間中は、公式サイトだけでなく、さまざまな組織が攻撃のターゲットになることが予想される。DDoS攻撃をはじめとするサイバー攻撃の踏み台としての利用も含め、セキュリティリスクのいっそうの啓発が求められる。
セキュリティのキーワードとして次に挙げたいのが「Windows Defender」だ。その性能向上に伴い、サードパーティ製セキュリティソフト更新を打ち切り、エンドポイントセキュリティをWindows Defenderに一本化するケースも目立っている。それに伴い、外部からの攻撃からネットワークを守る「UTM(統合脅威管理)」や、ウイルス感染した機器を隔離することでネットワーク内のウイルス拡散を防ぐセキュリティスイッチなど、一歩先のセキュリティ提案が求められている。
また、ランサムウェア対策としてのバックアップにも注目したい。データを人質に身代金を請求するランサムウェアにはデータバックアップが有効だが、その際には端末がアクセスできない場所を保管場所として用意することが求められる。具体的には、バックアップ専用ツールを利用して感染マシンから直接アクセスできない形でバックアップを行うことや、テープメディアの活用がその提案になる。
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