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 米国時間の8月6日、マイクロソフトは開発者向けのMSDNおよびITプロ向けのTechNet両サービスの有償購読者を対象に、Windows 7のダウンロード提供を開始した。8月6日時点で提供されているのは英語版のみだが、UltimateとEnterpriseの両SKUを多国語対応させるためのランゲージパックの提供も行われており、英語以外の言語についても事実上コードは完成しているものと考えられる。ヘルプファイルの翻訳作業など、付随的な作業の完了を待って、逐次提供されるだろう。10月22日にWindows 7の一般販売を開始するという公約はどうやら守られそうだ。 2006年11月に登場した現行のWindows Vistaは、初期バージョンの完成度に問題があったこと、内部アーキテクチャの見直しやセキュリティの強化によってデバイスドライバやアプリケーションに関する互換性を一部失ったことなどにより、好意的に迎えられたとは言い難い。だが、その理由の中には「不運」も含まれていたように思う。それは、利用可能なハードウェアリソースの先祖返りだ。 OSに限らずソフトウェアは、次世代の製品を企画する際、今よりも高い性能のハードウェアでの利用を前提にする。OSの提供サイクルが3年であるとしたら、3年後のハードウェアを想定して新しいOSの開発をスタートさせる。言い替えれば、3年間で得られるであろう性能で、どんな機能を実現するかが開発の大きなテーマとなる。 Windows Vistaの場合、提供時期がWindows XPのリリースから5年あまりが経過したタイミングになることもあって、ハードウェアの性能向上の見積もりが大きくなっていたとしても不思議ではない。PC業界から、もっと最新のハードウェアを生かせるOSを提供して欲しいというプレッシャーもあっただろう。 Windows Vistaの不運は、普及が本格的に進むと思われた1年後（2007年末）に、後のNetbookにつながる低価格PCが発表され、SSDと合わせて2008年の大ベストセラーとなったことだ。Netbookで主流となっているAtomの性能は、シングルコアであることも含め、その4年前に登場したPentium M（Dothan）に近い。また低価格のSSDは、性能はともかく容量が8〜16GBと、Windows Vistaが想定していたであろうハードディスクの10分の1程度に過ぎなかった。 ハードウェアの性能向上どころか、時計の針が逆回転してしまっては、Windows Vistaが成功できるハズもない。結局Windows Vistaは、一世代前のWindowsXPとの共存を余儀なくされる。それが余計にWindowsVistaの評判を落とすことになり、新しいプラットフォームへの移行は進まなかった。 Windows 7の大きな特徴の1つは、ハードウェアに対する要求仕様をWindows Vistaから据え置いたことにある。1GHz以上のプロセッサ、1GBのメモリ、16GBの空きハードディスク領域、DirectX 9互換のGPUといったスペックは、Windows Vistaから変わっていない。逆に、起動時に呼び出すサービスを減らす、画面のダブルバッファリングを止めてメモリの使用量を減らすなど、軽くする努力さえ払われている。Windows Vistaリリース以降の3年間におけるハードウェアの進歩をなかったものとしてWindows 7のベースラインは設計されたわけだ。単なる流行ではなく、Netbookが1つの商品ジャンルとして市場に定着しつつあることを考えれば、おそらくこの判断は間違っていないのだろう。
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