大塚商会の販売最前線からお届けするセールスノウハウマガジン「BPNavigator」のWEB版です。
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2007年7月時点の情報を掲載しています。
ジェームズ・スロウィッキー(Surowiecki, James)著の「みんな意見は案外正しい」のなかに、みんなが集まって牛の体重を当てるというエピソードがあります。いま目の前に牛がいることを想像してみてください。あなたはその体重をどうやって推察されるでしょうか?同著では、個々の人々が、自分の経験から、あーだ、こーだと話し合っているうちに、いつのまにか正解に近づいていくというのです。
筆者がこの部分を読んで思い出したのは、オライリー(Tim O'Reilly)が提案したコンセプト「Web2.0」でした。まだ、Web2.0が知れ渡っていないほんの数年前のことです。筆者はある企業経営者の方から「Webにバージョンがあるとは知らなかった。2.0とはどのような仕様ですか?」と真面目に質問されたことがあります。Web2.0とは既存のWebテクノロジーを双方向に特化した場合に起きるWeb社会を意味しています。ホームページは発信者が受信者に向けた一方向の媒体でした。対してSNSやブログは、みんなが参加することを前提にしています。
インターネットは誰でも情報を発信できる革新的な技術です。ところが本質を探ると、人々の鑑識眼に応じられる情報を発信できる人には限りがあることがわかりました。たとえば競合他社のHPと差別化したいと考えた場合、高度なHTMLの知識スキルやWebデザイン面でのセンスが求められたのです。さらに頻繁に情報を更新できる必要にも迫られました。このことは結果的に、社内に人的リソースを抱える大企業ほど優位に立てる状態を示すことになりました。
Web2.0のキーワードは何でしょうか?筆者はこれを「参加システム」の構築だと考えています。成功事例は2つあります。ひとつはGoogleであり、もうひとつはアマゾンです。
Googleの成功は高度な検索エンジンの開発に成功したことと、無料のAPIの提供が新たなサービスを生んだことにあります。筆者の知人の開発者は、Google AnariticsとGoogleEarth及びGoogle Mapを核としたマーケティングツールを見せてくれました。現在、地図情報を提供するサービスが多々ありますが、Googleが提供するAPIを採用するところが爆発的に増えています。「なかのひと」(http://www.ideaxidea.com/archives/2007/04/jp.html)というサービスをご存知でしょうか?。自分のブログがどの企業や団体から見られているか、競合企業が自社サイトをどれだけ見にきているか、はマーケティング担当者でなくても気になるものです。「なかのひと」では、無料でそれを知ることができるのです。
アマゾンはどうでしょう?当初は書籍からスタートした通販サイトですが、現在は商材の範囲や品数だけでなく、みんなを参加させるというWeb2,0的システムに対する評価が高まっています。アマゾンが他のECサイトを圧倒しているのは、お客様がマーケットを作るというスタイルを守っている点にあります。
これまで新製品開発といえば、企業が顧客のニーズやウォンツを探り、これなら売れるだろうと判断したものが市場に提供されてきました。アマゾンをご覧になると理解できますが、企業の意図とは別次元のところで最終消費者が声を発しているのです。買ったけど期待はずれだった、ここは余計な機能じゃないの、マニュアルに不備があるなどなど・・・。最終消費者の声には遠慮がありません。
批判の声だけではありません。驚いた!こんなに便利だったんだ、これなら友人・知人にも勧められる、この値段なら絶対にお得など、賛意を伝えるコメントも数多く集まっています。こうした声に応えるかのように、アマゾンでは数年前に発売された商品までもが売れ続けるといったロングテール市場を創造するまでになりました。アマゾンの成功は「参加システム」の妙にあったのです。
島川 言成
パソコン黎明期から秋葉原有名店のパソコン売場でマネージャを勤め、その後ライターに。IT関連書籍多数。日本経済新聞社では「アキハバラ文学」創生者のひとりとして紹介される。国内の機械翻訳ソフトベンチャー企業、外資系音声認識関連ベンチャー企業のコーポレート・マーケティング部長を歴任。現在、日経BP社運営のビジネスサイト「日経SmallBiz」でIT業界の現状分析とユニークな提案をするコラムを連載中。PC月刊誌「日経ベストPC」では秋葉原のマーケティング状況をリポート。また、セキュリティ関連ベンチャー企業のマーケティング部門取締役、ゲームクリエーター養成専門学校でエンターテインメント業界のマーケティング講座も担当。
【コラム】「売れるショップに売れる人」
・第13回 攻めの姿勢の空気を充満させよう 【Vol.32】
・第12回 組織力を強化する2つの能力を育むもの 【Vol.31】
・第11回 「内部統制」の本質を古典から考えた 【Vol.30】
・第10回 接客応対に"絶対"はないと知ろう 【Vol.29】
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